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3]ターゲット・マーケットの絞り込み

潤沢な予算や万人を捕らえる強力な魅力を有する観光資源があっても、数百万〜数千万人のコンシューマーを有するマーケットに万遍なくその観光魅力をPRをするのは非常に効率が悪い方法です。欧米と比較して外国旅行の発展が遅れたアジア諸国でも、外国旅行に求めるニーズ、旅行形態、デスティネーションはますます多様化してきています。そこで、マーケットを細分化し、誘客を重点的に行う対象となるマーケット・セグメント(特定の客層)を具体化することにより、ターゲット・マーケットを絞り込むことが非常に重要になります。このターゲット・マーケットは、居住地域、人口の規模、性別・年齢層、学歴、所得レベル、ライフスタイル等の共通項を持ち、その範囲を具体的に把握できるセグメントを抽出します。

外国旅行に回復の兆しが現れてきた韓国では、1年前極度な経済不振を背景に、外国へのパッケージツアーがほぼ壊滅状態でした。しかし、新婚旅行はどのカップルも国内旅行を希望しているため、どこも満杯となり海外へ行かざるを得ないという状況だったので、ハネムーンマーケットが狙い目となるセグメントでした。米国では、外国旅行マーケット全体の中で日本への興味を持つ人が非常に少ないため、訪日旅行者もごく一部に限られています。しかし、米国の多くの大学が同窓会の会員サービスとして世界各方面向けに実施しているツアーを日本に誘客できる可能性があり、この大学の同窓会をターゲット・マーケットの一つとして挙げることができます。

 

4]ポジショニング(差別化) Product Positioning

「なぜ○○県に旅行に行かなければならないか」をコンシューマーに説得するには、日本以外の国あるいは日本国内の類似したライバルとなるデスティネーションとの違いを明確にする必要があります。例えば、台湾で沖縄のビーチリゾートを特色としたパッケージツアーを販売する場合、価格だけではプーケット、パリ、セブ島等の東南アジアのビーチリゾート・ツアーとの競争には勝てません。しかし、「近さ、安全性、清潔さ」を強調することで競争力が大幅に向上します。

差別化を図る分野は、観光地のイメージ、資源・施設の内容、価格、サービスの質、プロモーションの方法等がありますが、観光資源・施設の内容で勝負することが多いようです。

 

5]「マーケティング・ミックス」(4つの"P")の決定

マーケットのニーズに基づいたデスティネーションの戦略的な位置づけを行った後は、どのようにデスティネーションを販売し、誘客競争をしていくかという実践面での戦略を策定します。これらはマーケティング・ミックス(Marketing Mix)といわれ、「4つのP」に分類されます。地方公共団体や企業は、自らの予算、人材等を考慮しつつ、最大限の効果をもたらすように、これらの分野ごとの比重や具体的な内容を決めていきます。

 

(1) 戦略的商品(プロダクト) Product

現在、外国のマーケットで販売されている地元への旅行商品について調査し、リスト化します。そして、どのような旅程になっているのか、何を特色とする商品なのか、売れ行きはどうか、どこの旅行エージェントが力を入れているのか、購入するのはどの客層か等についてそれらの商品の分析を行います。さらに、今後どのような商品が成長していくのか、新たにどのような商品を開発していくべきか等の「戦略的商品」の検討を行いその内容を決めます。これがパッケージツアー商品でなく、FITの低廉旅行やビジネス客、インセンティブ・ツアー、SIT(スペシャル・インタレスト・ツアー)の場合もあります。

 

 

 

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