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(3) 外国人旅行者の入込み実態調査

地元への国別入込み外国人旅行者数・宿泊日数、訪問地、滞在中の活動内容、消費額等が把握できれば、経済効果を知ることばかりでなく、誘客活動の効果をモニターできるので、これらに関するデータを整備することが重要です。さらに、地元のどんな観光資源に興味を持ったか、その評価等の質的な分析もできれば、観光目玉の絞り込みに役立ちます。

 

2) 長期目標の設定

 

これまでに明らかになった外国マーケットにおけるニーズと地元デスティネーションのマーケットにおける位置づけに関するデータを基に、今後3〜5年にわたり達成したい具体的な長期目標を設定します。

対象マーケット、デスティネーションが提供する観光魅力、デスティネーションをコースに組み込んだ旅行商品のライフサイクル(寿命)等により目標の立て方が異なります。例えば、既にある程度の規模の外国人旅行者を受け入れている地方公共団体は、その数を何十万人までに増やすというような目標が考えられます。東京や京都など知名度の高いデスティネーションは、滞在日数を延ばして経済効果を高めるなどが考えられます。一方、知名度の低い地方の観光地の場合は、その周辺地域と共同で知名度そのものを上げることを優先させることになります。また、雪まつりの一時期にアジアの旅行者が集中してしまう札幌市は、別のシーズンにも来訪してもらえるように、旅行時期の平準化を目標とすることが考えられます。いずれにしても計測可能な目標の立て方をすれば、誘客事業を評価することができます。

 

3) マーケティング戦略の策定

 

上述の長期目標を達成するための方針がマーケティング戦略です。外部の環境の大きな変化があった場合は、長期目標とともにマーケティング戦略もある程度修正する必要があります。例えば、円高となりこれが相当期間続くような兆しがある場合、欧米マーケット対象の低廉個人旅行を「戦略的商品」とするデスティネーションは、マーケットをアジアに変える等、戦略の見直しをしなければならないでしょう。

 

1]観光目玉の絞り込み

マーケティング戦略策定のための基礎的な分析作業として、対象となる外国のマーケットに対し地元の観光資源・施設の中で何が最も訴求力があるかをより明確にします。地方公共団体は立場上、特定の観光地や観光施設を目玉にしずらいですが、遠方より来る外国人旅行者、特にアジアからの旅行者は、ある地域内で最も魅力のある観光地のみを訪問する傾向が強いので、それに絞り込むことが重要となります。まず、デスティネーションを代表する観光地に誘客して初めて、周辺の場所へ誘客することが可能となります。何をその地域の目玉にするかを決定することが成功の鍵です。

 

2]デスティネーションの範囲の設定(パートナーの選定)

外国人旅行者は、一ヵ所滞在型より複数の県にまたがったルートで旅行をします。したがって、広域で誘客活動を実施したほうが、外国の旅行業界やコンシューマーにとって観光魅力が理解しやすく、また旅行商品が造成しやすいので宣伝効果が上がります。誘客する側にとっても、他団体と連絡調整の手間はありますが、予算やマンパワーを節約できるメリットもあります。

最近は、一つの県や市ではなく、東北、近畿、九州などの広域ブロックでの誘客活動が増えており、より成果を上げることができるようになりましたが、マーケットによっては、この範囲をさらに広げたり、逆に狭くしたりする柔軟性も必要になってきます。

 

 

 

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