(ピアノ演奏)
これは何といっても、あの人の曲ですね。大親分の曲ですけど。これが旅を一番象徴しているのは、『はーるばる来たぜ 函館へ』と『はーるばる』。函館へ来るのは、はるばるだったんですね。今はすぐですけれども。やっぱり、函館くらい離れていると、はるばるという言葉がいきる。しかも、これは下の低い音から始まって、1、2、3、4と4拍伸ばして、それから「るばる来たぜ」と上がる訳です。こう伸ばしている間が、距離の遠さを表していますね。これが「は/る/ば/る/来/た/ぜ」じゃあありがたみも、何にもないんですね。「はー」でこの間でビブラートを付けて、「は〜〜〜るばる」とこれは上に上がってくる訳です。上へ上がってきて、最後はどこに行くのかってーと、函館。その函館ていうメロディーを「ハ・コ・ダ・テ・へ」と「タンタ・タンタ・タン」。勇ましいですね。「タンタ・タンタ・タン」。これ以上勇ましい節はありません。だから、「はるばるきたぜ 函館へ」という満足感、やったーという感じがある訳ですね。これはそういう意味で、非常に詩が情景を語り、そして、人の気持ちを語っている素晴らしい「函館の女」というのは素晴らしい詩だと思いますね。曲も素晴らしいです。
さあ、そして函館へ着きます。まず旅館へ行くと、何てったって、あれですね。拓郎チャンの。
(ピアノ演奏)
『旅の宿』ですね。『ゆかたの君は すすきの簪 熱燗徳利の首 つまんで もう一杯いかがなんて 妙に色っぽいね』と、こういう色っぽい歌詞というのは、この拓郎チャンのフォーク全盛だった時代には、ほとんどまずないですよ。
さあ、そうしますと、函館で旅の宿で、その後、やっぱり函館からだともっと上へ行きたい。行く所は最終的には、何と言ったって、ここです。
(ピアノ演奏)
『襟裳岬』ですね。ここまでいくと、あー果てまで来たかと、日本の果てまで来たと、そういう感じはする訳ですけども、さっきから、その風景がどうのこうのと僕も言っていますけども、歌には心情を、本当の奥底に隠れた本当の気持ちを、いつの間にかさらけ出してしまうという、そういう歌もある訳です。これはまさにその通りで、絵より何より、襟裳岬の絵が見えるんじゃなくて、これを歌ってる人の心情が分かる、どういう心情か。歌っているのは、森進一ですね。これは。
最初の方は何となく、『トゥルルン タタティタン タタン タタティタダディダン ディダダダン〜〜』何となく決心しきれない、何か迷って、弱い感じがしません。同じことをグジグジ グジグジ。大原麗子にするか、森昌子にするか、ということでさんざん迷ってた時期の心情がよく出ていると思いません、これ。
それに、別に名前を付けたんですね。襟裳って付けたんですけど、『襟裳岬』というよりは『選んだかかあ』という感じですね。こういう風に心情を丸出しに出した歌として、これは傑作なんです。