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鈴木/今日は旅のお話ですが、象というのは動物の中で一番旅をするんです。一生の間に世界を一周すると言われているんです。私はアフリカに象の調査に行ったことがあるんですが、象の歩いた後は、鉄筋コンクリートで固めたみたいですよ。集団で、しかも集団をリードするのはお婆さん象なんです。お婆さん象が先頭で、自分の経験でもって、今度はどこにエサがあると、ずーっと探して行くんです。

島田/女性の言うことを聞きなさい。

鈴木/そうなんです。間違いないんですよ。さっきその3頭の象が次々に死んで行くっていうお話がありましたね。象は倒れると、自分の体重で肺を潰してしまうんです。ですから、群の中で病気になった象が倒れると、みんな鼻で起こします。立てと。鼻をみんな突っ込んでね、それが大きな愛情ですよ。それで、仲間が残念ながら、亡くなるでしょう。そうすると、骨だけが残っているんです。頭蓋骨だけを残して、全部ジャングルの中に運んでしまうんです。だから、象牙を調べるのは難しいんです。それ程までに象の社会ってのはすごい結束なんですよ。

島田/すごい本能ですね。

鈴木/それで乾燥期になると、水がないでしょ。そうすると、象は本能的に水のあるところが分かるんですよ。グーっと掘るんです。そうすると、水が出てくるじゃないですか。そこでちゃんと順番を作って、その僅かな水を分かち合って飲むんです。

島田/すごい。

鈴木/そりゃあ、すごいもんですよ。ですから、そういうことがわかっていると、今の『象さん、象さん。』というのも、それから、『里の秋』で、なぜ風景の中にお父さんがいないだろう、ということを今初めてお分かりになった方もいらっしゃるかと思います。そのお父さんはシベリアに抑留されていたり、南の島で寂しい日々を送っていたんですね。その留守を守っていた方達が歌っていた歌なんですね。ですから、そういうことを全然知らないで、歌ってる子供達は本当に幸せだと思いますし、また、そういう社会を、時代を作ってはいけないんだと、私達はお互いに分かる訳なんですね。ですから、一つの歌の裏側にあるもの、そういうものを知ってるいると、歌を聞く或いは歌うときも、大きく変わってくる。

宮川/『里の秋』は、お父さんがいないのはそういうことだと、聞かされると、お父さんが出て来ないのはそういう訳だと分かると、歌う時に、やっぱり、必ずそれを思い出して、歌うと思うんですよ。で、それをみんな受け継いで行くと、いいんじゃないかと思いますね。

鈴木/一つの歌の後ろには、いろいろな、その人その人の想いっていうものがあるもんですよね。そういう想いを多くの人に拡げて歌われてきた歌が、今日までいろいろな生命を持ってきた訳ですね。

宮川/今日は旅と言うことなんだけども、歌で旅をするとか、音楽は世界中を旅をする、ということはとても大事みたいですね。

音楽は旅をするということで、旅をするには昔は鉄道に乗って、……。

鈴木/昭和39年東京オリンピックの前に、初めて新幹線が通ったんです。私その中継を生で3時間半のわたって全部やったんです。当時としては画期的な、今やってもあれ程の中継はできないと思うんです。そして、私が新大阪の駅で結びにいった言葉がですね、これから本格的に新幹線が開通すると、多くの方がこれを利用なさって、新しい時代のスピードを満喫されるでしょうと。しかし、この鉄道が日本中に普及しようとした時に、日本人はもう一遍、あの駅弁を売っている鈍行に乗りたいと思う時代が、もしかしたら来るかも知れないという、これを私は昭和39年に言ったんです。

 

 

 

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