よく笑い話に使われるのに“スプリング・ハズ・カム”(Spring has come.)というのがあります。これを、「春がきた」ではなく「ばねを持ってこい」と訳した。スプリングという語を引くと、一番初めにばねと出てくる。ハズ=持つ、カム=こい、と書いてある。シンボルの使い方の違いということです。
これも私のいた病院であったことですが、息子ががんの末期だと言われたが、具合が悪くなっても板張りの部屋には入れないでほしいと言ってこられたお母さんがいました。板張りの部屋って?何のことでしょう。精神科の病棟には白い壁よりも板張りのほうがこころが落ち着くというので、木目の壁の部屋があったのですが、がんで手術をしたあとに精神科の病棟へ入るというのは考えられないと思って、どういうものがある部屋かとよくよく聞きましたら、酸素ボンベがあって……と言われるのです。
イタバリとはリカバリーのことだったのです。ところが英語は得意ではないし、息子のことで非常に不安だし、よく聞くリカバリーという言葉を自分の了解範囲の中で一番近い言葉に当てはめてみたらイタバリ(板張り)だった(笑い)。ああ、そうかと思って、「リカバリーというのは回復……」と言いかけて気がついたのは、回復を開腹といっておなかを開けるととられたら大変だということです。そこで、そこの部屋はこういう役目があって、これこれこういうことでと説明したら、よくわかって下さったのですが、そのあとで「板張りと聞くたびに柩のことを思っていました。そういうところに入れられてしまったらもう出られないと思っていました」と言われました。