5) 自分のニーズを明らかにする
しばしば、改められない問題行動は、何か別のニーズが隠されていることがあり、そのニーズの代理となっていることがあります。たとえば、過食が親密な人間関係から自分を遠ざけるバウンドリーになっていることがあります。真のニーズは、人との親密な関わりですから、このニーズが明確にされ、親密な関係を築くことへの恐れや不安を取り除かない限り、過食をコントロールすることはできません。
また、心身症の女性は、「ノー」が言えず、相手に合わせることが彼女のライフスタイルでした。彼女にとって、唯一「ノー」と言えるのは身体症状を出しているときです。彼女のニーズは、周りの人々からの自立ですから、このニーズが満たされると、つまり、ノーのときに「ノー」が言えるようになると、徐々に心身症的な症状が少なくなるのです。バウンドリー問題のパターンとしては同意者ですから、育ってきた家庭環境も含め専門的なカウンセリングが必要となるでしよう。
6) 失敗から学ぶことなしに自立はできない
バウンドリー形成にとって、決して忘れてはならないことは、失敗を恐れないことです。失敗するともうだめだと落胆し、途中で止めてしまうことが多いのですが、自立の道のりは長期のプロセスであることを、自覚する必要があります。失敗することを恐れてマスターできることは何もありません。ピアノを弾けるようになるまで失敗しない人は誰もいません。数えきれないほどの失敗をして一人前のピアニストになります。たとえ一人前になってもなお失敗します。自立も同じです。失敗から学ぶ姿勢が重要なのです。失敗したなと感じたとき、まず、なぜうまくいかなかったのかを分析し、次はどのようにそれを克服できるかを検討することです。そのとき、自分でできる範囲と誰かに援助を求める必要のあることを明確にしつつ、対応していくことです。これが、バウンドリーの確立と自立のプロセスそのものです。このようなことをくり返していくとき、バウンドリーの芽が出て、自立に向かいます。