たとえば家族が病気で近所の助けを必要とするとします。そのときに、その必要がわかっていても「はい」と応答しないのです。また、電車の中で困っている人を見ても知らん顔をしている群衆は、まさにバウンドリーのなさが露呈しているといえるかもしれません。さらに、社会問題となっている学校や職場におけるいじめなどにも見ることができます。非応答者がいかに多いかが示されているといってよいのです。大人(教師も含めて)も子どもたちもいじめられて助けを求めているのにもかかわらず、「はい」と応答して助けようとしないのです。それは、バウンドリーの問題なのです。
d. 回避者――「はい」が聞けない
次に「回避者」というのは「はい」を聞けないということです。つまり、他人のケアを受けられないのです。回避者のバウンドリーというのは、壁のようなバウンドリーです。これはバウンドリーが確立しているのではなくて、壁のように固くなっていて外からは誰も入れないということです。たとえば、ある人に問題があるとします。本当は誰かからの援助を受けなければならないようであっても、この人はがんとしてそういう申し出に対して「はい」が言えないのです。「しますよ」と申し出ても、それに対して「はい」と言ってそれを聞き入れることができません。これが回避者です。
このように4つの種類の「バウンドリー問題」があるのです。
2) バウンドリー問題の特徴
a. 時と場所によってパターンが変わる
バウンドリー問題をもっているときには、このうちのどれか1つだけが問題だということでもありません。時と場所によって、あるいは人々との関わりの中で、非応答者的になることもあるし、回避的になることもあるし、同意者的になることもあるのです。