しかし、それを国際関係で使うと、「検討する」というのは相当前向きな意味なのです。検討したら、必ずその返事を出さなければなりませんが、日本の場合には「検討します」と言って、あとは何も言いません。一体いつ返事がくるのだろうと待っているけれども、なかなかきません。問い合わせるとそんなことを言ったかどうかも忘れており、あとで問題が生じてくることにもなりかねません。はっきりと「ノー」を言わないために、つい延ばしてしまう。同じ日本人同士だと「ノー」なのだということがわかります。日本人同士の場合、バウンドリーがお互いに明確でないと、言葉をあいまいにすることによってバウンドリーを自然に築こうとします。しかし、それはお互いによく知っているもの同士であればいいのですが、外交関係とか、あるいは正式な契約のときには、言葉を明確にしないと、相手に誤解を与えてしまいます。そして、現代社会では国際化の波と日本の伝統的基盤が徐々に変動し、あいまいにすることでは自然のバウンドリーが十分に築けなくなりつつあります。言葉で自らの意志や考えを明確にして伝えないと変化に対応することが困難になっています。
バウンドリーが十分に確立しているかどうかを自分で知るためには、ノーのときはどの程度はっきりと「ノー」と言っているかどうかをチェックするとわかります。
3) 地理的距離
第3番目のバウンドリーの具体例は、“地理的に離れる”ということです。離れると、人と人との間にバウンドリーが自然に築かれます。「ノー」と言えない人がいるとします。それでも「ノー」と言わなければならないようなときには、なるべくその人には近づかないことです。