日本財団 図書館


6) 考察

ここ数年来の給料遅配による暴動事件、1998年末の国会議員の選挙および1999年8月に予定されていた大統領選挙問題などで、中央アフリカ共和国の政情は流動的であった。今年度は現地の日本大使館および保健省と連絡の上比較的情勢が落ち着いている7月に調査を行うこととした。バンギーに到着後、ケラ・セルジャン村に検診に出かけるか否かの検討と分析を行い、この時期であれば国道3号線は問題がないとの判断で、4年振りにケラ・セルジャン村の検診を実施した。その結果蠕虫卵の陽性率は4年前よりも減少しており、全体の寄生虫感染率もやや低下していた。健康手帳も有効に使用されており、既にすべての頁が記載され終了していた手帳の保有者には再交付を行った。また全検査を受診した人達で健康手帳保有者と初診者とを比較した場合にも健康手帳保有者の陽性率は87.7%で初診者の陽性率95.3%よりも低率であった。4年間の検診・治療の空白があるにも拘わらずこのように寄生虫感染者が低下しているのはこれまでに実施した衛生教育が役立っているものと思われる。一方バンザ村でも健康手帳保有者の陽性率は88.6%で初診者の陽性率96.8%よりも低率であって、過去に検診を受けた人達ではその効果が認められている。なおバンザ村では一昨年度血液検査を実施しているが、その成績を今年度の成績と比較すると、糸状虫ミクロフィラリア陽性者は一昨年度が34名中23名(67.6%)、本年度が119名中46名(38.7%)であり、その中ロア糸状虫陽性者は一昨年度11名(32.4%)、本年度14名(11.8%)、常在糸状虫陽性者は一昨年度21名(61.8%)、本年度は44名(37.0%)、両種混合感染者は一昨年度9名(26.5%)、本年度12名(10.1%)であり、何れも本年度の方が低率であった。またマラリア原虫陽性者は昨年度が34名中8名(23.5%)、本年度が119名中65名(54.6%)であり、熱帯熱マラリア原虫陽性者は一昨年度3名(8.8%)、本年度40名(33.6%)、四日熱マラリア原虫陽性者は一昨年度7名(20.6%)、本年度45名(37.8%)、両種混合感染者は一昨年度2名(5.9%)、本年度20名(16.8%)であり、その他に本年度は1名の混合感染者から卵形マラリア原虫も検出されている。以上のごとくバンザ村では糸状虫では常在糸状虫感染者が多く、マラリアでは四日熱マラリア原虫感染者の方がやや多かった。

なお4年振りに実施したケラ・セルジャン村を始めバンザ村およびウワンゴ診療所でも寄生虫の陽性率の増加がみられないのは、住民に対する衛生教育とともにこれまで現地の検査技師に検査技術の移転を行った成果であると思われる。このように現地の看護士および検査技師が独自に寄生虫の検査、診断が出来るようになり、また衛生士が衛生教育の手法を会得したのは継続されている笹川記念保健協力財団の寄生虫対策調査が徐々にではあるが効果を現わしているからだと判断される。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION