10年前まではケラ・セルジャン村では蛔虫症患者が存在しなかったが、道路が整備され、交通の便が良くなったこともあって、全国に患者が検出されるようになっている。蛔虫卵の陽性者に対してもコンバントリンの投与を行った。
d) マンソン住血吸虫症
厚層塗抹法でマンソン住血吸虫卵が陽性であったのはケラ・セルジャン村で226名中15名(6.5%)、ウワンゴ診療所で203名中3名(1.5%)であり、厚層塗抹法とMGL法の併用検査ではケラ・セルジャン村で183名中30名(16.4%)、バンザ村で97名中1名(1.0%)であった。参考までに1979年以降毎年経時的に検診を行っているケラ・セルジャン村の過去の成績を眺めてみると、35.9%、27.4%、26.0%、13.2%、19.8%、14.4%、19.1%、13.5%、16.1%、10.3%と減少し、ゲリラ出現で3年間検診を行わなかった1991年には26.1%と以前の陽性率にまで戻り、その後は11.9%、17.9%、12.4%、17.5%(1995年)となり、政情不安により3年間の検診休止の後である今年は16.4%と殆ど陽性率の変化は認められなかった。なおケラ・セルジャン村の併用検査で虫卵が陽性であった30名の中厚層塗抹法のみで虫卵が検出されたのは3名、MGL法のみで検出されたのは20名であり、バンザ村では厚層塗抹法で全員が陰性であったが、MGL法のみで1名が虫卵陽性であった。従ってマンソン住血吸虫症の診断にはMGL法が優れているが、厚層塗抹法も併用する方が好ましいと考えられる。前記したごとく最近中央アフリカにおいても道路が整備されて他地区との交流が頻繁となり、それに伴って元々その地区に居住している住民を駆虫しても他地区から患者が転入して虫卵を散布する機会が多くなっているので、診断された患者の治療のみならず、中間宿主対策無くしては完全撲滅は困難であると思われる。マンソン住血吸虫卵陽性であった者に対してはプラジカンテルを投与した。
e) 条虫症
厚層塗抹法でテニア条虫卵がケラ・セルジャン村で2名、ウワンゴ診療所で1名が検出され、MGL法でケラ・セルジャン村から1名の縮小条虫卵が検出されている。現地で実施した厚層塗抹法で検出されたテニア条虫卵陽性者3名に対してはプラジカンテルを投与した。
B) 糞便検査による原虫嚢子検査成績
ホルマリンエーテル遠心沈殿法すなわちMGL法による消化管寄生原虫嚢子検査成績を纏めた結果は表3のごとくである。即ちケラ・セルジャン村では183名中原虫嚢子陽性者は124名(67.8%)で、バンザ村では97名中陽性者は63名(64.9%)であり、両村の合計では354名中187名(66.8%)であった。