またウワンゴ診療所で実施した検尿でビルハルツ住血吸虫卵が陽性であった3名に対してもプラジカンテルを投与した。なおバンザ村では昨年度の検診結果で糸状虫のミクロフィラリアが陽性であった者に対してはジエチルカルバマジンを、マラリア原虫が陽性であった者にはクロロキンを投与した。その他ケラ・セルジャン村には寄生虫陽性者が検出された場合に備えて郡長であるサヨ氏にコンバントリンとクロロキンを供与して保管を依頼し、ブアール病院、バンザ村の診療所およびウワンゴ診療所にはコンバントリン、サイアベンダゾール、プラジカンテル、クロロキン、メトロニダゾールを供与して、ブアール病院では医師と看護士に、バンザ村の診療所およびウワンゴ診療所では看護士に、寄生虫症の患者が検出された場合には投薬を実施するように依頼した。
5) 検査成績
糞便および血液の各検査成績をまとめると以下の通りである。
A) 糞便検査による蠕虫卵検査成績
厚層塗抹法のみでの糞便検査により見いだされた寄生蠕虫卵陽性者の成績を纏めたのが表1である。即ち全検査者526名の中厚層塗抹法による蠕虫卵の陽性者は103名(19.6%)であった。その中ケラ・セルジャン村では226名中58名(25.7%)、バンザ村では97名中25名(25.8%)、ウワンゴ診療所では203名中20名(9.9%)で、ケラ・セルジャン村とバンザ村の陽性率は殆ど同じで、首都バンギー地区のウワンゴ診療所の陽性率は低かった。またケラ・セルジャン村とバンザ村の検体で行った厚層塗抹法とMGL法の成績を纏めた蠕虫卵検査結果は表2のごとくで、280名中109名(38.9%)が陽性で、その内訳はケラ・セルジャン村で183名中73名(39.9%)、バンザ村で97名中36名(37.1%)であり、両検査法を併用した場合でもケラ・セルジャン村とバンザ村の陽性率は殆ど同じであった。あお厚層塗抹法でのみの成績はMGL法との併用の成績よりも陽性率が10-15%低く、蠕虫症検診の際には両検査を併用することが必要であることが示された。
参考までにバンザ村における過去の陽性率を比較すると、7年前31%、6年前32%、5年前40%、4年前32%、2年前39%、昨年度20%(但し厚層塗抹法のみ)、本年度36%とその陽性率は殆ど変化がみられていない。これは毎年初めての受診者がいるためであると思われる。一方ウワンゴ診療所での陽性率は厚層塗抹法による成績であるが、7年前31%、6年前26%、5年前23%、4年前5.5%、3年前26%、2年前21.4%、昨年度26.7%、本年度9・9%であった。このウワンゴ診療所は同一対象者の追跡調査ではなく、集団検査受診希望者および診療所の外来患者を対象にしているため、治療効果判定などの意味は余りないが、地区全体の寄生蠕虫の蔓延状況をみるのには役立つものである。