3) 検診方法
検診はケラ・セルジャン村およびバンザ村では検便と血液検査を実施し、滞在期間が短く、また受診者が多いことから本年度は皮膚検査を割愛した。ウワンゴ診療所では検便と尿検査を行った。今回も晴天であった事から、ケラ・セルジャン村では健康手帳交付と血液塗抹標本作製は現地の木陰で行い、厚層塗抹法による検便および血液標本処理はブアール病院の検査室を借用して実施した。バンザ村での検診および厚層塗抹法による検便はすべて野外の木陰で行い、糞便の遠心沈殿処理と血液塗抹標本作製は現地に電気がないため、材料をウワンゴ診療所に運んで行った。またウワンゴ診療所における検便および検尿は診療所の検査室で行った。なおバンザ村に同行して下さった大使館の黒沢医務官は健康手帳作製交付のお手伝いをして下さると同時に現地住民で寄生虫症以外の患者の診療をして下さった。
a) 血液検査
受診者のうちケラ・セルジャン村の235名およびバンザ村の119名の指頭血より採血した血液を使用して濃塗および薄層の血液塗抹標本を作製した。これらの標本は風乾後日本に持ち帰り、濃塗標本は蒸留水で溶血して薄層塗抹標本とともにメタノール固定後、ギムザ染色を行ってミクロフィラリア、マラリア原虫などの検索を実施した。
b) 糞便検査
ケラ・セルジャン村の183名およびバンザ村の97名については現地で厚層塗抹法による蠕虫卵検査を行うと同時にヌンクのチューブに糞便を入れてホルマリン固定をして日本に持ち帰り、MGL法(ホルマリン・エーテル法)による遠心沈殿法を行って、蠕虫卵と消化管寄生原虫嚢子の検査を行った。なおケラ・セルジャン村での検診最終日に糞便を提出した45名およびウワンゴ診療所での受診者203名については現地での厚層塗抹法による検便のみを実施して蠕虫卵検索を行った。
c) 尿検査
これまでの検診結果でビルハルツ住血吸虫卵陽性者の殆どがウワンゴ診療所から検出されていることから、ウワンゴ診療所では血尿を認める者および排尿痛などビルハルツ住血吸虫感染が疑われる者の77名について尿を提出させ、約3,000rpm15分間遠心沈殿してその沈渣を鏡検してビルハルツ住血吸虫虫卵の有無に関する検査を行った。
4) 治療方法
ケラ・セルジャン村、バンザ村およびウワンゴ診療所で行った厚層塗抹法による検便で蠕虫卵陽性であった者には抗蠕虫薬を投与した。すなわち鉤虫卵、蛔虫卵陽性者に対しては日本から供与薬品として持参したピランテルパモエイトであるコンバントリンを、鞭虫卵陽性者に対してはサイアベンダゾールを、マンソン住血吸虫卵およびテニア条虫卵陽性者に対してはプラジカンテルを投与した。