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以上のごとく4年振りに実施したケラ・セルジャン村を始めバンザ村およびウワンゴ診療所でも寄生虫の陽性率が増加していないのは、住民に対する衛生教育とともにこれまで現地の検査技師に検査技術の移転を行った成果であると思われる。

 

1) 検診対象

ケラ・セルジャン村では237名の受診者があり、その中新受診者の95名に健康手帳を交付した。226名はその日に糞便の提出があったので厚層塗抹法による検便を現地で行い、蠕虫陽性者58名に対して駆虫剤の投与を行った。また235名についてはマラリアおよび糸状虫症検査のための血液塗抹標本を作製した。なお本年度は受診者が多く、また4年前の検診で陽性者がいなかったので、時間の関係もありオンコセルカ症のための皮膚検査は割愛した。

バンザ村では119名の受診者があり、その中新受診者71名に健康手帳を交付した。97名はその日に糞便の提出があったので、厚層塗抹法による検便を現地で行い、蠕虫陽性者25名に対しては診療所の看護士に駆虫剤を渡して治療を依頼した。また119名についてはマラリアおよび糸状虫症検査のための血液塗抹標本を作製した。昨年度の検診でもオンコセルカの検査結果が全員陰性であったので皮膚検査は行わなかった。

ウワンゴ診療所では203名の糞便提出者があり、厚層塗抹法による検便の結果20名が蠕虫卵陽性であり、また血尿を認める者および排尿痛などビルハルツ住血吸虫感染が疑われる者77名について遠心沈殿法による検尿を行い、3名のビルハルツ住血吸虫卵陽性者が検出された。これらの寄生蠕虫症患者に対してはコンバントリンとプラジカンテルを診療所長に薬剤を渡して投与を依頼した。

 

2) 健康手帳

中央アフリカ共和国には戸籍登録がなく、また同姓同名のものも多いことから受診記録の混同を避けるために考案したものである。健康手帳には寄生虫学的検査成績を記入する欄の他に、病院や診療所を訪れた際にその診療記録について記入する欄を備え、ポラロイドによる各人の写真を貼付して通し番号を付し、各人に保管させている。この健康手帳は1983年度よりケラ・セルジャン村で使用を始め、バンザ村でも1991年より使用しており、大部分の者が健康手帳を大事に保管している。ケラ・セルジャン村でもバンザ村でもこの健康手帳は評判が良く、両村での初診者および近隣の村人達での希望者が多く、今回は新たにケラ・セルジャン村で95名、バンザ村で71名の計166名の新受診者に新しい手帳を交付した。本年度で1983年に作製した健康手帳はすべて現地で使用された。なおウワンゴ診療所は首都のバンギーに近く、同一受診者の経時的検査が困難であることからこの健康手帳は交付していない。

 

 

 

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