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【調査成績概要】

 

本年度の調査は辻、下田、冨永の3名で平成11年7月の雨期に現地調査を行った。今回は4年振りにケラ・セルジャン村の検診を行い、同時に昨年に引き続きバンザ村とウワンゴ診療所の検診と治療も行った。

調査の結果、厚層塗抹法とMGL法の併用による検便成績はケラ・セルジャン村では183名中蠕虫卵の陽性が73名(39.9%)、鉤虫卵陽性が70名(38.3%)、マンソン住血吸虫卵陽性が30名(16.4%)であり、その他蛔虫、鞭虫、テニア条虫、縮小条虫の虫卵陽性者がそれぞれ1-2名検出された。またバンザ村でも蠕虫卵の陽性は97名中36名(37.1%)、鉤虫卵陽性が34名(35.1%)で、その他マンソン住血吸虫卵陽性は1名(1.0%)であり、鞭虫卵陽性3名(3.1%)、蛔虫卵陽性2名(2.1%)が検出されている。

厚層塗抹法のみを行ったウワンゴ診療所では203名中20名(9.9%)が蠕虫卵陽性であり、その内訳は鉤虫卵陽性15名(7.4%)、蛔虫卵陽性3名(1.5%)、マンソン住血吸虫卵陽性3名(1.5%)、テニア条虫卵陽性1名(0.5%)であった。またビルハルツ住血吸虫症の診断のためウワンゴ診療所でのみ検尿を行ったが、77名中3名(3.9%)からビルハルツ住血吸虫卵が検出された。

消化管内寄生原虫嚢子の検査はMGL法による検便をケラ・セルジャン村とバンザ村で行ったが、ケラ・セルジャン村では原虫嚢子陽性が183名中124名(67.8%)で、その中赤痢アメーバ陽性が31名(16.9%)、ランブル鞭毛虫陽性が14名(7.7%)であった。またバンザ村では原虫嚢子陽性が97名中63名(64.9%)で、その中赤痢アメーバ陽性が23名(28.9%)、ランブル鞭毛虫陽性が4名(4.1%)であっ.て、原虫嚢子の陽性率は両村で殆ど同じであったが、赤痢アメーバの陽性率はバンザ村の方が高率であった。

血液検査によるミクロフィラリア陽性者はケラ・セルジャン村では235名中29名(12.3%)で、陽性者29名中ロア糸状虫陽性が24名(82.7%)と多く、逆にバンザ村では119名中46名(38.7%)がミクロフィラリア陽性で、この陽性者46名中44名(95.7%)で常在糸状虫のミクロフィラリアが検出された。またマラリア原虫陽性はケラ・セルジャン村では235名中141名(60.0%)、バンザ村で119名中65名(54.6%)であり、大差は認められなかった。なおケラ・セルジャン村では熱帯熱マラリアが陽性者の82.3%と四日熱マラリアの53.2%よりやや高率であったが、バンザ村では熱帯熱マラリアが61.6%、四日熱マラリアが69.3%と大差は認められなかった。なお本年度にはバンザ村から1名の卵形マラリアが検出されているが、この1名は熱帯熱マラリアおよび四日熱マラリアも陽性であった。

またケラ・セルジャン村で全検査を受診した人達を比較すると、健康手帳保有者の陽性率は87.7%で初診者の陽性率95.3%よりも低率であった。4年間の検診・治療の空白があるにも拘わらずこのように寄生虫感染者が低下しているのはこれまでに実施した衛生教育が役立っているものと思われる。一方バンザ村でも健康手帳保有者の陽性率は88.6%で初診者の陽性率96.8%よりも低率であって、過去に検診を受けた人達ではその効果が認められている。

 

 

 

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