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カンボジア国内のメコン川の本流および支流域のどの地域が汚染地帯であるかを明確に把握することが疫学的にも基本的なコントロール対策の指針となると思われ、更にこれらの調査がカンボジア王国に猖獗を極めている本症の対策に少なからぬ貢献ができることを願うものである。

一方、これまで、重点的におこなってきた血清疫学調査に加えて、今回は新たに超音波診断装置によるメコン住血吸虫患者の肝臓・脾臓病変の超音波画像上での診断方法への取り組みに着手した。その結果、総被験者数139名のうちメコン住血吸虫の慢性感染による明らかな肝繊維化像が観察されたのは26名、そして明らかではないが何らかの肝超音波像の異常が観察された被験者を含めると93名もの住民に何らかの肝病変のある可能性が推察された。しかし、腹部超音波像上の大前の診断基準による場合で病変像として最も重症化している結果としてのステージ3、つまりネットワーク・パターンを示す腹部超音波像は全く観察できなかった。これまでに腹部超音波検査が数多く実施されているマンソン住血吸虫症においても、その超音波像にはネットワーク・パターンが全く観察されていない事実から予想すれば、メコン住血吸虫症においてもネットワーク・パターンが現れない可能性も充分考えられるが、この調査を継続して実施し十分な被験者数を得ながら、考察を深めてゆきたいと考えている。

 

 

 

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