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VII. フィリピン共和国の日本住血吸虫症流行地における小児の腹部超音波検査による肝実質像の比較調査と日本住血吸虫症対策への利用方法

 

大竹英博

松田肇

 

フィリピン共和国は大小多数の諸島より構成され、その中には全く日本住血吸虫症流行地を持たない小さな島から広大な流行地を抱えて、農業発展の阻害要因となっている大きな島までそれぞれの島々には様々な程度の感染状況が存在する。今回フィリピン共和国の中からそのような多様性を考慮に入れてミンドロ島とミンダナオ島における日本住血吸虫症流行地に生育する小学生に焦点を合わせて調査を開始した。慢性日本住血吸虫症において最も傷害される臓器であるといえる肝臓、そして脾臓の状況を腹部超音波検査により数量化し、比較するために超音波診断法は1970年代より使用され始めたが、日本国内で使用され始めたのは1980年代に入ってからである。そして現在この検査法は世界各地の住血吸虫症のある地域で主に調査目的で広く使用されている。今回私たちは獨協医大の医動物学教室所有のポータブル型超音波診断装置(フクダ電子UF-4000)にコンベックスタイプのプローブ(フクダ電子FUT-C111A 3.5MHz 60R)とプリンター(Sony UP-890MD)を組み合わせて一式とした検査機器を日本よりフィリピン共和国へ運び込んだ。また、これらは電子部品であることから空港で他の荷物と共に預けることなく機内持ち込みでフィリピン共和国までの往復を空輸した。

 

調査:7月25日に大阪よりマニラ入りした。空港税関にて多少の問題が発生したもののほぼ予定通り保健省、RHOなどを表敬訪問を実施することができた。マニラ〜バタンガス〜カラパンと予定通りの移動ができ、7月28日には調査を開始した。最初の調査対象として東ミンドロ州ヴィクトリア町マラボ地区に所在のマラボ小学校に在籍の小学生107名(男53名、女54名)を選んだ。これらの被験者に対して、実施される検査の目的並びにその内容の十分な説明の後に現地の日本住血吸虫症対策チーム所属の医師により患者の基礎病歴の聴取がなされた。その後、検査に同意した小学生に対し同チーム所属の臨床検査技師が採血を実施し、また腹部超音波検査は日本住血吸虫症対策チーム所属の医師の立ち会いの下で派遣専門家が実施した。また8月14日には往路の逆を辿り、カラパン〜バタンガス〜マニラの経路で戻った。8月15日に空路で2番目の調査地のあるミンダナオ島へと移動し、さらに奥地にある南アグサン州サンフランシスコ町へは長時間乗合バスに揺られて到着した。この町のフバン地区に所在するフバン小学校に在籍する小学生107名(男55名、女52名)に対して、前調査地同様に実施される検査の目的並びにその内容の十分な説明の後に現地の日本住血吸虫症対策チーム所属の医師により患者の基礎病歴の聴取がなされた。その後、検査に同意した小学生に対し同チーム所属の臨床検査技師が採血を実施した。しかし、腹部超音波検査は日本住血吸虫症対策チーム所属の医師がマニラヘ出張したために、現地医師の立ち会い無しで派遣専門家が実施した。

 

 

 

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