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V. レイテ島における日本住血吸虫症の疫学調査

 

松田肇

 

A. レイテ島小学校児童における日本住血吸虫症および各種蠕虫感染の疫学調査

 

サンタ・フェ町サン・ファン小学校の1学年から4学年までの児童を対象に糞便検査をおこなった。サン・ファン村(San Juan村)は図5の地図に示したようにサンタ・フェ町の南西部に位置する。この村の児童から回収した糞便をfolmalin-detergent法で処理して日本に持ち帰り獨協医科大学にて検鏡した。

日本住血吸虫および腸管寄生蠕虫の虫卵検出結果を表10にまとめた。住血吸虫卵の陽性率は平均して1割ほどであった。学年に伴う変化傾向みとめられなかった。蛔虫、鞭虫の感染率は全学年を通じて極めて高かった。鉤虫は低学年に若干検出された。

検出された虫卵の密度を、糞便1gあたりの虫卵数(EPG; eggs per gram)に換算して表11に示した。蛔虫卵、鞭虫卵では高学年においては虫卵密度の高い検体が見られなくなる傾向がみとめられた。

 

B. レイテ島における保虫宿主動物の調査による新たな貝生息地の発見

 

サンタ・フェ町サン・ファン村において各種保虫宿主動物の糞便検査をおこなった。ブタ132検体、イヌ4検体、水牛6検体、ヤギ2検体の計144検体について上記と同様にfolmalin-detergent法で処理して日本に持ち帰り獨協医科大学にて検鏡した。

日本住血吸虫および腸管寄生蠕虫の虫卵検出結果を表12にまとめた。今回はブタに重点を置いたため、イヌ、水牛、ヤギの検体は少数である。それでもイヌでは日本住血吸虫卵が検出されており、当地での住血吸虫の生活環の成立に与っていることが示された。ブタもまた比較的低い陽性率(2.27%)ではあるが感染していた。糞便内虫卵密度を表13にまとめた。住血吸虫卵密度がブタで比較的低いのと対照的にイヌでは高いが、排便量や検体数の問題などもあり結論的なことは言えない。オリエンタル・ミンドロとは異なり、レイテ島ではブタの野外での放し飼いが多く見られる。感染ブタの飼育場所の調査を行った結果、村内のある農家の周辺に高密度の貝生息地を新たに発見することができた。保虫宿主動物の調査により貝の生息地を発見したことは、特筆に価する。

 

C. プラジカンテル治療後の血中抗体価の変化

 

1999年2月に治療後、1ヶ月、3ヶ月、6ヶ月、9ヶ月、12ヶ月後の経時血清についてELISA法により血中抗体価を測定した。

 

 

 

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