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IV. ボホール島における日本住血吸虫症の疫学調査および中間宿主貝生息調査

 

松田肇

小学生における血清調査:

笹川財団の本島における住血吸虫対策の計画が発足した初年度(1981年)に実施された、各流行地の小学校児童のELISA抗体陽性率と比較し、対策18年後の状況を知る目的で、ボホール島の5つの村落について小学校児童の血清疫学調査をおこなった。採血にはキャピラリーを用いた。検査方法はオリエンタルミンドロ州における血清疫学調査と同様におこなった。ELISAの結果を表9および図4に示した。表9には1981年度におこなった調査結果も併記した。San Roqueでは陽性率は1981年度に比べ約半分に減少した。Kinan-oanおよびSto.Tomasも顕著では無いが陽性率の減少を示した。M.Cabigohanでは1学年で陽性者が無くなり、またELISA値もおよそ0.5までの低値に留まっている。これらの結果は、人の対策も含め、貝の生息状況の消退と関連するものであり、その時期における抗体値が今だに残存しているものと推測される。San Vicenteでは1981年度には陽性率2割弱であったが、今回は陽性者0であった。

全体を通して各村で陽性率が減少し、特筆すべきは、San Vicenteにおいては陽性者が無くなるなど、住血吸虫症対策の成果が認められたことである。

また、1999年度にボホールSCTが実施したKato-Katz法による流行地の検便調査は、San Vicente(695名)、San Jose(2,384名)、Kinan-oan(763名)及びM.Cabigohan(622名)の計4,464名の検査を終了した。その内、San Vicenteでは2名(0.28%)、及びKinan-oanで3名(0.39%)に虫卵陽性者が認められ、いぜんとして少数ながらも陽性者が存在していることも分かった。

 

中間宿主貝調査:

ボホール島ではSan RoqueのOmaguin Palawan(seepage, pocket)とBunaos Palawan, San VicenteのApao Palawan, Gaspar boggy, Trocino boggy, Boncales boggyおよびKanggabok creek, Sto ThomasのOrvillo Palawan, NoellaPalawan, rice field,およびKasilion Creek, CabigohanのKinannoan rice field, Omaguin Seepageなどの貝生息調査を行ったが、貝は全く認められなかった。

ボホール島SCTの貝学部内は、本年1月〜8月迄に全ての流行地における貝生息調査を実施した。その結果、8月の時点では全ての地域で貝の生存は確認できなかった。

 

 

 

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