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検査方法はオリエンタルミンドロ州における血清疫学調査と同様におこなった。対照者は、パロのSRTDの外来患者で、検便で虫卵陽性者或いは、COP反応陽性者80名を患者の同意を得て行われた。

治療後に再感染をし、検便で虫卵が陽転した患者は、3ヵ月後に65例中1例(1.5%)、6ヵ月後51例中8名(15.7%)、1年後には54例中10例(18.5%)に認められた。従って、プラジカンテル治療後に再感染を繰り返す者が多数にのぼることが明かとなり、今後の対策法の検討に示唆を与えるものである。

12ヶ月後血清で陰転したものはなかった。抗体価の経時変化をみるため12ヶ月後血清(12ヶ月後血清のないものについては9ヶ月後血清)の抗体価を、そのヒトの血清のうち最も高い抗体価を示したときの値で除して変化率とした(表14)。

全対象者80人のうち12ヶ月後血清または9ヶ月後血清の提供者は63人であった(うち9ヶ月後血清までのヒト ; 9人)。半分近く(54%)の例で抗体価はピーク時の60%以下にまで減少しているものの、3割近くに関しては1年近く経ても抗体価がピーク時の80%以上に留まっており、個人差が大きいことがわかる。

本実験はELISA法による疫学調査の結果を評価する上で重要な基礎データを与えるものである。

本研究は、レイテ島パロの住血吸虫症研究・研修センターの前所長であるDr.Lilia Poltillo及び現所長のDr.Imelda Balongaの強力な協力態勢に負うところが大であり、深甚なる謝意を示したい。

 

D. まとめ

 

今回はパロから14kmの位置にあるサンタ・フェ町サン・ファン村の調査をおこなった。糞便検査において小学校児童(9.68%)、イヌ(25.0%)、ブタ(2.27%)で日本住血吸虫虫卵が検出され、この地域が日本住血吸虫症の脅威にさらされていることが明らかになった。この村は、住血吸虫症対策の1モデル地域であり、プラジカンテルの集団治療が行われている場所である。しかし、中間宿主貝の対策は全く行っておらず、治療後の再感染がかなり頻発におこっているものと解され、貝のコントロールの重要性が指摘される。

プラジカンテル治療後の経時的な調査に60人以上を越す人々の協力を得られたことは大変貴重であり有り難いことである。この検体に関しては、被検者の再感染の有無などのデータも加味してつぶさな解析をして行きたい。

表15には日本のミヤイリガイの、フィリピン産住血吸虫に対する感受性を調べた結果を示した。山梨県産ミヤイリガイでは感受性は低かったが、千葉県産の貝は高い感受性を示した。このことは今だ日本に生息しているミヤイリガイが海外からもたらされる住血吸虫の感染を受け、再び生活史をまわすのに関与する可能性があることが示唆される。

 

 

 

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