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この結果は1997年度から1998年度における両村のイヌ糞便の虫卵陽性率(それぞれ9.7%と19.2%)とよく対応する。

糞便内虫卵密度を、糞便1gあたりの虫卵数(EPG ; eggs per gram)に換算して表6に示した。Malaboのイヌのうち半分はEPGが高く、重度の感染であると考えられる。

 

3. ラットの剖検

昨年に引き続き野生のラットの調査をおこなった。住民に依頼し、捕獲したラットを購入した。最終的にMalabo 203頭、San Pedro 70頭、San Narciso 110頭のラットを入手できた。剖検により日本住血吸虫感染を調べた結果(表7)Malaboでは203頭中30頭(14.8%)、San Pedroでは70頭中1頭(1.4%)、San Narcisoでは110頭中6頭(5.5%)で虫体または肝臓内虫卵がみつかった。従来の結果と同じく、Malaboが他に比して感染率が高い傾向があった。

 

C. オリエンタルミンドロ州における日本住血吸虫の中間宿主貝の調査と土地改良・殺貝作業の効果

 

MalaboにおいてOncomelania quadrasiの生息調査をおこなった。調査地点を図3に示した。最初に、村落西部の水路(Malibaguhan creek)の起点となる湿地(A地点)、次に村落中央部で田に開墾された平地に残る巨木の根元(B地点)、その巨木の東側の湿地(C地点)の3点でおこなった。結果を表8に示した。

A地点は小学校にも近く、ここで一匹とはいえ感染貝が見つかったことは重要である。しかし調査後A地点を含め水路の植物伐採と殺貝剤の撒布をおこなったのでその効果に期待する。B地点とC地点はかつて草地であった所を新たに水田に開墾した地域の中にある。B地点である巨木の根元には水があって植物の間を魚が泳いでいるような状況になっている。C地点は畦に鋭角に挟まれた場所で使いづらいためか湿った草地のまま取り残されている。この2地点とも生息密度は低いもののB地点では感染貝も見つかっており今後、徹底した除草と殺貝剤散布が必要である。なお、B地点から北西に100mほどの草地はラットの生息地となっており、住民がラットを捕獲する場所となっている。

今新たに、Malabo村の西側、村の住民や小学生の通学道路となり、感染貝の生息も認められるMalibaguhan creek(1.1km)の除草と、Bayluscideによる殺貝を実施した。11月にも再度徹底した殺貝を試みる。

 

D. まとめ

 

オリエンタルミンドロにおいては3村落(Malabo、San Pedro、San Narciso)を対象とした調査を続けている。依然、特にMalaboにおいてヒト、動物ともに住血吸虫感染があり、ELISA陽性率も高いことが示されたが、過去のデータとの比較により3村とも着実に陽性率が減少している傾向が認められた。

今回、Malabo村のメインロード沿いにあった広大な中間宿主貝生息地が開墾され、水田になっているのを確認した。フィリピンのOncomelania quadrasi は水中生活性が強く日本のミヤイリガイほど乾燥に強く無いので、水田では生息できない。この開墾により、Malabo村における最も重要な日本住血吸虫感染原を排除することができたと考えられる。更に、今回新たに別の貝生息地であるMalibaguhan creekも除草と殺貝を行った。今後の住民感染の変化に注目したい。

 

 

 

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