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B. オリエンタルミンドロ州における保虫宿主動物の調査

 

3村落(Malabo、San Pedro、San Narciso)における保虫宿主動物の分布状況を把握するため各村落住民の飼育動物数を調査した。Malabo、San Pedroに関してはイヌの糞便検査をおこなった。その際、今回初めての試みとしてイヌの個体識別をするため、飼い主に依頼してイヌを鎖でつないでもらって糞便を回収する方法を試みた。また、各村落から野生のラットを集め日本住血吸虫感染状況を調査した。

 

1. 各村落の動物飼育状況

調査は、各村落のリーダーに協力をあおぎ、調査用のワークシートを配付して記入してもらい、後日回収する方法をとった。集計結果を表に示した(表4)。牛、ヤギの飼育は3村落とも少なかった(0〜5.3%)のに対し、水牛、ブタを所有する家の割合は多かった(10.8%〜54.2%)。一戸あたりの飼育数は水牛が1〜2頭の少数であるのに対し、ブタは複数(平均2.3〜3.2頭)であった。イヌは高い率で飼育されており、3村のうち最も少ないSan Pedroでも67%、San Narcisoにおいては調査した83件のうちイヌがいないのは2件のみであった。一戸あたりのイヌの飼育数は1〜2頭が主であった。

3村を比較して、San Narcisoの動物所有率が他に比して高いことがわかった。

 

2. イヌの糞便検査

村落のイヌの糞便検査をするにあたり、従来は野外に落ちている糞便を回収する方法をとっていたが、その場合同じイヌ個体の糞便を重複して採取する危険を否定できず、統計上問題となる可能性を含んでいた。そこで今回はイヌを個体識別して糞便を採取をするため、イヌを鎖でつないだ状態で排便させる方法をMalabo、San Pedroで試みた。イヌ用の鎖および首輪はマニラで購入していったが、ミンドロ島でも販売していることがわかった。飼い主に鎖、首輪、糞便回収用のビニール袋を渡し、糞便の回収を依頼した。繋がれ慣れていないイヌも多いため困難が予想されたが、飼い主は協力的に対応してくれた。暴れて繋ぐことができなかったイヌや、首輪を壊して逃げるものもいたが、大部分は繋いでおくことができた。しかし繋がれている間糞便を我慢してしまい二日を経過しても排便しないものも多く、回収できた糞便数はSan Pedroで10検体、Malaboで31検体であった。検査の結果(表5)、虫卵陽性検体はSan Pedroでは10検体中1検体(10.0%)、Malaboでは31検体中6検体(19.4%)であった。

 

 

 

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