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III. オリエンタルミンドロ州における日本住血吸虫症の疫学調査

 

桐木雅史

松田肇

 

A. オリエンタルミンドロ州小学校児童における日本住血吸虫症の疫学調査

 

昨年に引き続きナウハン湖西岸に位置する3村落(Malabo、San Pedro、San Narciso)を調査対象とした。1学年から3学年までの小学校児童について血液および糞便を採取し検査をおこなった。

 

1. 小学校児童の血清疫学調査

Malaboでは148名を対象とし、ろ紙採血およびシリンジ採血をおこなった。San Pedroでは107名、San Narcisoでは115名を対象とし、キャピラリー採血をおこなった。検体は日本に持ち帰り獨協医科大学にてELISA法により日本住血吸虫虫卵抗原に対するIgG抗体価を測定した。フィリピンの日本住血吸虫症患者のプール血清を陽性対照として抗体価の補正に用いた。

ELISAの結果を表1および図1(散布図)に示した。抗体価0.200以上を陽性と判定した。表1の検査数は、対象児童数から欠番などを除いた実際に検査を行った検体数を示す。

Malabo、San Pedro、San Narcisoそれぞれの総検査数での陽性率は42.9%、29.5%、12.5%であった。散布図においてはMalaboで高ELISA値に集団がみられた。昨年度も検査を受けた児童について結果を照らし合わせると表2にみられるように大部分は変化無かったものの、Malaboで陽転した者が1名みられた。今回得られた結果も高い陽性率であり、依然本地域での感染の危険性は否めない。しかし1997年度の各村の陽性率71.3%、34.1%、39.8%と比べるとそれぞれ減少しており、徐々に改善にむかっていると期待される。

Malaboにおいてはシリンジ採血と同時にろ紙採血もおこなった。ろ紙採血は必要な機材も少なく、運搬も簡便であることからフィールドでの利用に適している。シリンジ採血した血清(147検体)と、ろ紙採血検体(148検体)とでELISAを行い結果を比較したところ高い相関がみられた(R2=0.921) (図2)。ろ紙採血で陰性で血清では陽性だったものが5検体(3.4%)あったが、全体としては概ね同様の結果であったことからろ紙採血が有効な方法であることが裏付けられた。陰性対照として日本人20人の血清およびろ紙採血検体についてもELISAを行い図2に白丸でプロットした。

 

2. 小学校児童の糞便検査

血清疫学調査の対象となった児童の糞便を回収し、folmalin-detergent法で処理して日本に持ち帰り獨協医科大学にて検鏡した。

Malaboでは99検体中3検体(3.0%)で虫卵が検出された。EPGは20、50、60といずれも比較的少なかった。San PedroおよびSan Narcisoではそれぞれ81検体、94検体調べたが虫卵は検出されなかった。(表3)

 

 

 

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