医療・介護
1 病床数や医療施設の利用状況
図1
日本の病床数(人口千人当たり)は、主要国の中で際だって多くドイツの1.4倍、アメリカの3倍である。日本の外来受診率は高く、入院の平均在院日数も長い。
日本の人口千人当たりの医師数はやや少ないが、看護職員数は平均以上となっている。一方、病床数は大変多く、人口規模が2倍のアメリカと全病床数で比較しても約1.6倍、人口千人当たりで比較すると3倍の量となっている。病床数が多いため、病床1床当たりの看護職員数は他国と比較して少ない。ただし、看護体制は改善されつつある。
患者行動を比較すると、日本の外来受診率は大変高い。これは、患者が自由に医療機関を選択でき、どこの医療機関でも受診が可能であること(医療機関に対するアクセスがよいこと)を示している(コラム)。一方、入院した場合の平均在院日数は日本が国際的にみてきわめて長い。これは、病院機能や患者の入院行動が他国と明らかに異なっていることを示唆している。他の国でもかつては30日を超えるところもあったが、近年はいずれも20日以下に減少している(参考1)。日本の場合は、半年を超えるような長期入院が全体の平均値を押し上げており、実際には20日台前半の数値の病院が多数となっている。
2 医療費の国際比較
図2
日本の医療費(対GDP比)はOECD加盟国29か国中18位と中位以下にあり、主要国の中ではイギリスに次いで低く、アメリカの2分の1、ドイツの70%程度である(注)。OECDの資料による医療費の範囲は、日本の統計で通常用いる「国民医療費」よりは広い概念となっている。医療費の水準の比較のためには、マクロ的な視点ばかりでなく、同一の疾病に対する医療費コストの比較、医療費の費用対効果、各国の生活水準との相対的な比較など、いろいろな視点からの検討が必要である。
(注)
医療費(1人当たり、ドル換算)について国際的に比較すると、下表のとおりで、日本はアメリカの65%、ドイツの90%程となり、対GDP費でみるよりも高い水準になる。
資料:OECD“Health Data '98”
(注)○の数値は順位を表す。
日本では、人口構成の高齢化の進展とともに、老人医療費は、その伸び率は国民医療費の伸び率を大きく上回っており、1998年度では国民医療費の36%を占めるに至っているが、2025年頃には国民医療費の5割を占めると予想されている。老人医療費は現役世代の被保険者や事業主がその大半を負担する老人保健拠出金と、国や地方公共団体の負担金とで賄われているが、この拠出金の負担が年々増大し(今日では各医療保険者の支出の3割)、各医療保険者の財政運営の圧迫要因になっている(参考2)。
3 公的介護費(対GDP比)の将来推計
図3
栄養水準の質的向上や体位の向上等を反映して、国民の約9割は健康状態を「よい」か「普通」と感じている。老後の最大の不安要因といわれる介護問題についても、実際に要介護状態になる割合は、虚弱状態を含めても65歳以上人口の約13%である(85歳以上でははるかに高い値になる。「家族と若者」28頁参照)。平均的にみると、65歳から亡くなるまでの間の約9割の期間は、介護を必要とせずに自立した生活を送っているものと推計されている。
医療と同様に、介護に要する費用も公的と私的の合計である(私的介護費は総額がわからない国が多い)。公的介護費(対GDP費)は今後とも現在より大幅に増加すると見込まれている国はない(日本は例外)。