年金
1 主要国の公的年金給付(対GDP比)
図1
年金水準の国際比較については、国により給付の設計、財政方式、財源構成などが異なることなどに注意する必要がある。こうした比較の難しさを前提にした上で、厚生年金の老齢(退職)年金平均年金額の水準を1993年度時点で他の先進国と比較すると、日本の月額は15.9万円で、ドイツ(7.5万円;5年加入で受給権が発生するため、平均額が低くなっていると考えられる)、スウェーデン(基礎年金夫婦5.8万円、付加年金6.3万円)、イギリス(基礎年金夫婦6.4万円、付加年金1.5万円)、アメリカ(単身6.9万円、夫婦10.3万円)に比べて、金額面では最も高くなっている。ただし、日本では賃金水準も高いことから、現役世代の平均賃金(製造業)に対する平均年金額の比率は43%であり、他の国々はドイツ31%、スウェーデン58%、イギリス43%、アメリカは単身32%、夫婦48%となっている。このように、日本の厚生年金の水準は諸外国に比べて遜色ない水準となっている(参考)。
公的年金給付の大きさは先進諸国では既に国民経済に大きな影響を与える規模に達しているが、アメリカやイギリスでは今後とも相対的に小さな規模にとどまる見込みである。先進国の年金改革では、税か保険料かにかかわらず、負担をこれ以上増やさない方向の改革が模索されている。
2 高齢者世帯の収入に占める公的年金のウエイト
図2
公的年金給付は高齢者世帯の収入源の中で最も大きなシェアを占めている(日本64%、アメリカ43%)。特に低所得の高齢者は収入の80%以上を公的年金に依存している。98年国民生活基礎調査によると、「高齢者世帯」(注)の平均所得は323万円で、その内訳は公的年金が64%、稼働所得が27%であった。また、公的年金以外に所得源のない高齢者世帯の数はおよそ60%にのぼっていた。
(注)高齢者世帯の定義は、「94年に変更され、65歳以上の者のみで構成するか、又はこれに18歳未満の未婚の者が加わった世帯」とされた。この変更以前は、「男65歳以上、女60歳以上の者のみで構成するか、又はこれらに18歳未満の未婚の者が加わった世帯」であった。
(参考)日本の公的年金の受給者は年々増えている(左図)。厚生年金の受給者は、全体の44.1%である(右図)。