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社会福祉と負担

 

1 社会保障給付費(対GDP比)の国際比較

図1

社会保障の規模を表す指標としては、一般に社会保障給付費が用いられる。社会保障給付費はILO(国際労働機関)の基準に基づき、社会保険や社会福祉等の社会保障制度を通じて、1年間に国民に給付された金銭またはサービスの合計額である。社会保障給付費は医療・年金・福祉その他(社会福祉、家族給付、失業給付等)に区分されているが、主要先進国と比べて日本の社会保障は、福祉(障害者や老人に対する福祉サービス等)や家族給付(児童手当等)の分野で立ち遅れている。介護保険制度の施行や少子化対策によってこれらの分野の拡充が期待される。

 

2 租税・社会保障負担(対GDP比)(対の国際比較

図2

日本はまだ、負担が少ない。しかし、急激な少子高齢化によって日本の社会保障も構造改革が求められている。先進国の社会保障改革では「負担の限界」に直面している国が多い。

 

3 家計部門の受取に対する直接税・社会保障負担・貯蓄の割合

図3

家計における税や社会保険料の負担を各国で公表されている家計に関する調査を基にして比較すると、日本における家計の直接税や社会保険料の負担は、アメリカと同程度であり、イギリスやドイツよりも低い状況となっている。

また、夫婦と子ども2人のサラリーマン世帯における給与収入別の税(所得課税+消費課税)と社会保険料の収入に占める割合(以下、負担率とする)をみても、日本の負担率は他の先進諸国(アメリカ、イギリス、ドイツ、フランス)に比べて低い。給与所得300万円では、実効負担率は10%を少し超える程度でアメリカとほぼ同じ水準で、他の国の半分以下の水準である。給与所得700万円の世帯では、負担率が約37%のドイツの半分程度である。

社会保障は生活上のリスクに備える社会的な仕組みであり、貯蓄は個人の自助努力で生活上の不安に備えるものである。貯蓄率は日本で高く、スウェーデンやアメリカで低い(「貯蓄」20頁参照)。

 

4 生活保護制度の国際比較

アメリカの場合、低所得の高齢者や障害者を対象とする現金給付制度はあるが、日本の生活保護制度のような包括的な公的扶助制度はない。アメリカ以外の国々には全国民を対象とした公的扶助制度があるが、イギリスでは就労能力の有無、子どもの有無などに着目していくつかの制度に分かれており、フランスでは高齢者であるかどうか、失業しているかどうかによって異なった制度が適用される。イギリスでは1996年から、就労能力がありながら失業している者は求職活動等の要件がある所得関連求職者給付の対象となり、所得補助の対象外となった。これに対し、ドイツ及びスウェーデンは我が国と同様に、全国民を対象とする単一の制度となっている。連邦国家のドイツでは、生活扶助基準額は州ごとに異なる。

欧米諸国の方が我が国よりも相対的に受給者は多くなっている。アメリカではメディケイド(医療扶助)の適用者が総人口の約13%、フードスタンプ(食糧購入に使用できる切符)の受給者が総人口の約8%であり、イギリスでは所得補助の受給者が総人口の約12%、スウェーデンでは社会手当の受給者が総人口の約8%となっている。

 

 

 

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