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3 日本の長期金利は主要先進国のなかでは最も低く推移している

図3

日本では1995年から公定歩合が1%、さらに0.5%まで引下げられ、それにともない長期金利も大幅に低下し、92年に5%を割っていたのが、95年に入ると3%を割るようになり、その後も更に低下し続けて短期金利との差がほとんどなくなってしまった。このような事態は金利生活者に大きな打撃を与えている。一般に、金利が下がるときには株式等の利回りが有利になるが、バブルの崩壊に起因する平成不況下では株価も下落が続き、金融市場の価格メカニズムが機能してこなかった。

したがって、国内に運用先が見つからないため日本の資金は利回りの高い海外へ流出している。

(資料と注意事項)日本銀行『日本経済を中心とする国際比較統計』

長期金利として国債利回りを使用している。

それぞれ日本は10年国債、アメリカは30年国債、イギリスは20年国債、ドイツは10年国債、フランスは7年国債、イタリアは10年国債の利回りである。

 

4 貯蓄をめぐるトピックス

1と2で取り上げたのは1年間に貯めた金額を問題にしている。この貯蓄を専門用語ではフローの貯蓄と呼ぶ。この他に、「貯蓄残高」と呼ばれるストックの貯蓄がある。貯蓄残高に関してもマクロの統計とミクロの統計の間に相違点があることが問題となっている。

貯蓄残高は預貯金の残高の他に、生命保険の掛け金の総払込額、有価証券の現在価値等を合計した値である。総務庁の「貯蓄動向調査」によると毎年の貯蓄残高の推移を知ることができて、1999年調査では単身世帯を除く全世帯平均では1,738万円(勤労者世帯は1,393万円)であると報告されている。これに総家計数を掛けると日本の家計貯蓄残高の総額が分かり、約612兆円と推計されている。ところがお金の流れを整理したマクロの統計である『資金循環表』に基づく推計によると個人の金融資金は1,200兆円とされていて、家計からの積み上げの2倍近くにもなることが問題となっている。

『資金循環表』は「銀行の銀行」と呼ばれる日本銀行が作成しているものである。この問題を巡って論争が行われた結果、いくつかの原因が明かとなった。1つは貯蓄残高の分布は貯蓄残高の少ない家計が多数存在し、残高の高い家計が少ないのが一般的であり、偏りが大きいといわれている(下図参照)。

従って、平均1,738万円(勤労者世帯は1,393万円)といっても、この金額より少ない家計は全体の3分2ほど存在する。貯蓄に関しては調査員の努力にも関わらず、どの国でも貯蓄残高の多いところが十分に把握されていない傾向があり、日本も例外ではない。金額の多いところが過少に申告されていると、偏りの大きい分布では平均を押し下げる影響が大きい。

一方、『資金循環表』の個人資産は個人名義の勘定がすべて含まれており、中小企業等で事業用資金であっても、個人名義のものが含まれており、過大になる傾向がある。また、郵便貯金もすべて個人資産とされている点も実態に照らしてみると問題ありとされている。

すなわち、家計対象の数値(ミクロの統計)には過小評価の傾向があり、『資金循環表』の数値(マクロの統計)には過大評価の傾向があり、両者の乖離が大きくなったのである。問題の所在が明らかになりつつあるので、統計の信頼性を確保する意味からも両者の乖離を小さくする努力が払われるようになると思われる(参考文献:溝口敏行「『個人金融資産1,200兆円の謎』をめぐる論争について」(『季刊家計経済研究』第39号、1998年夏、63-67頁)。

 

貯蓄現在高階級別世帯分布(勤労者世帯)

021-1.gif

(標準級間隔200万円)

 

 

 

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