2. 狭山丘陵の自然を核とした地域づくり
1) 各地のエコミュージアム事例
(1) 調査目的
フランスの博物館学者、ジョルジュ・アンリー・リビエールが提唱した「エコミュゼ」(またはエコミュージアム)は、まずフランスにおいて実践され、我が国には鶴田総一郎氏がはじめてその概念を紹介し、その後、新井重三氏によって「生活・環境博物館」として導入された。エコミュージアムとは、従来の博物館のように建物を中心とした資料の調査研究・収集・保管・展示を行うのではなく、ある一定の領域、あるいは地域に点在する資源をまるごと博物館資料とみなし、現地において、そこに居住する住民がその保存・活用を主体的に行う博物館である。
しかしながら我が国では、従来の博物館そのものがもっぱらまちおこし的な事業として位置づけられてきた傾向から、このエコミュージアムも同様のスタンスで実践されている事例が多いことは否めない。が、多様化する社会背景に対応する形で、本来の博物館的な機能と、地域住民による地域の再発見、再認識、再評価を行うといったエコミュージアム本来の役割を実践する動きもみられるようになってきている。このような流れのなか、都市近郊で複数の行政区にまたがって存在する狭山丘陵の価値を再発見・再評価し、エコミュージアムづくりを進めていくことは、里山の保全、活用のうえで、またそれを根とした地域おこしのうえで有意義と思われる。
(2) 調査対象
今回調査した事業は、下記の4事業である。
1]多摩川エコミュージアム構想
2]朝日町エコミュージアム構想
3]環・円海山エコミュージアム
4]都留市まるごと博物館
このうち、1]は市民・企業・行政が一体となって進めている構想であり、2]は日本で最初にエコミュージアムの理念を導入し、実際に運営されているもの、3]は都市近郊で、複数の行政区域にまたがるフィールドでの運動であり、狭山丘陵と社会的条件が類似しているもの、4]は行政主体の事業展開を実施しているものである。そこで、われわれの構想づくり、さらにはその具体化にあたって参考にすべく、国内におけるエコミュージアムの事例を調査することにした。
(3) 調査方法
調査は、既存資料を参照しながら、現地において事業の代表者・担当者等からの取材を基本とした。応対者は下記のとおりである。