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(2) 緑地管理の現況と課題

狭山丘陵の樹林地および谷戸における里山管理の現況把握を目的として現地踏査による調査を実施した。その結果、確認された里山としての植生管理あるいは利用の状況を表II-1-3と図II-1-3に、また、これらの確認地点を図II-1-4に示した。

保全された緑地の管理については現在各地でさまざまな取り組みが行われている。一部では里山の再生に向けた新たな試行もみられるが、具体的な植生管理の手法や運営組織、そして新しい[有機産物]利用の開拓等はこれからの重要課題である。

以下に、里山管理の現況についてまとめた。

1]樹林地の萌芽更新

萌芽更新は、過去3、4年以内の実施状況を基準に調査し、皆伐あるいは択伐を含めて37地点が確認された。最も多いのは、現在東京都が整備を進めながら一部供用を開始している野山北・六道山公園で、他の地域についてもすべての地点が自治体の公園整備による維持管理区域に含まれている。したがって民有地における個人的な萌芽更新とみなされるものは1ヵ所も確認されなかった。

2]樹林地の林床管理

林床管理は、継続的な下草刈りおよび落ち葉掃きの実施状況を基準に調査し、全域で最も多い75地点が確認された。確認地点が多いのはやはり野山北・六道山公園であるが、民有地における伝統的な管理も各地で行われており、一部の農家においては従来の[有機産物]の利用を目的とした作業が継続されている。

3]湿地の植生管理

湿地の植生管理は、定期的な草刈り等の実施状況を基準に調査し、11地点が確認された。そのほとんどは、公園整備に伴う維持管理作業の一環として実施されているものである。

4]農産物等の栽培

樹林地および谷戸における栽培については、水田の水稲栽培4地点と林床のシイタケ栽培3地点の合計7地点が確認された。水稲栽培は、いずれも自治体による公園管理の一環として行われているものであり、谷戸田以外では丘陵の縁辺域の一部で生業として米の生産が継続されているものの、現在ではごく限られた農家によって支えられている状況である。

5]レクリエーションを目的とした利用

里山管理と直接的なかかわりはないが、今後の里山利用における展開を考慮して調査を実施した。狭山丘陵では、樹林地におけるアスレチック施設が3ヵ所で確認されたほか、樹林地内の遊び場とみられる場所が1ヵ所、さらに谷戸における親水エリアとして3ヵ所が確認されている。ただし、これらの利用実態については明らかでない。

 

 

 

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