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(2) 生活文化の変化と里山の保全

かつて、狭山丘陵周辺地域には里山を生産手段とする産業がいきづき、里山の自然と人びととの相互依存的な暮らしが繰り広げられていた。このような関係をとおして築かれ、世代を越えて受け継がれてきたひとつのレジームが形成されてきた。これを我々は積極的な意味を込めて「里山文化」と呼んでおこう。里山のシンボリックな存在が雑木林である点に注目し「雑木林文化」の呼称をも提案している。

この文化の基盤は農を基幹とした一次産業であり、相互扶助に高い価値を置く社会であり、多分に商品経済的色彩の薄い経済システムであった。

このような里山文化を瓦解に導いたのは、経済の高度成長がもたらした人びとの生活様式の劇的な変化であった。里地-里山を中心に生活が展開される地域をこのように呼ぼう-も都市同様の商品経済の席捲するところとなり、従来からの経済システムはほとんど姿を消すことになった。農業もその経営形態を大きく変え、里山との関係を絶ったし絶たないまでも関係は希薄になった。その結果は明白である。里山、とくに雑木林はその価値を喪失し、無用の長物と化した。前項でふれた里山景観域の年を追っての減少は当然の成り行きであった。

が、このような事態の推移は調和を欠いた地域を創りだす結果を招いた。混雑現象環境質の著しい劣化等を内容とする都市問題の発生と深刻化である。とくに都市およびその近郊に生活する住民は、都市化に伴う否定的現象をとおして改めて身近にある里山を新たな財-環境財として評価するようになった。里山の復権というよりは、より積極的な意味を込めて「新里山」-時機に適った里山という意味でこう呼ぼう-の発見である。

 

 

 

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