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遊びの内容については別項で詳しく述べるが、カマキリに寄生するハリガネムシの仲間を対象とした遊びは子どもの遊びとして特異なものだけに、これが狭山丘陵周辺域で伝承されてきた事実はたいへん興味深い。

また、鳥類と魚類において捕獲に関する数例の事例があるが、こうした行為も広い意味では遊びの範疇に含まれるものである。

3]動物に関する民間伝承

民間伝承は、魚類を除くさまざまな動物群で確認された。とくに鳥類の事例が目立つのは、移動性の強い動物であるという点と姿や鳴き声、動作などに特徴をもつ種が多く、したがって識別も比較的容易であることによるものと考えられる。さらにツバメやセキレイの仲間、アオバズク等はその繁殖域が人びとの暮らしの中心である家屋敷周辺の区域と重なるため、より身近な存在であったことも事実である。最近は渡来数が激減しているサンコウチョウも、かつては里山の環境や暮らしに適応した習性をもつ渡り鳥の種であったことが知られている。

さて、伝承内容をいくつかの類型で分類すると、表I-2-7のように動物の習性や特徴にまつわるものを中心に信仰やかかわり方と関連が強いもの、自然暦や生産暦として受け継がれてきたものに大別することができる。このうち習性や特徴を適確に表現した伝承が6割以上を占めているのは、当時の暮らしがそのまま動物たちを観察する場として十分に機能していた事実を示すものであろう。

 

表I-2-7 動物に関する民間伝承の類型と分布

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