(2) 暮らしのなかの動物
里山の動物たちは、人びとの暮らしにおいても身近な存在であった。
表I-2-6は、狭山丘陵とその周辺地域に生息する動物が人びとの暮らしのなかでどのようにかかわり、また利用されていたのかを聞きとり調査の結果から整理したものである。さらに対象となる動物群の内訳と項目別に集計した動物種の割合を図I-2-6に示したが、対象動物では昆虫類や鳥類が多く、項目別には遊びと伝承の分野に事例が集中している傾向がある。
動物の場合、食物としての利用を除けば植物のような直截的利用とは趣を異にするだけに、そのかかわり方は複雑で物質面ばかりでなく心象的な影響を伴うケースも少なくない。「自然と生業」の項で述べた水田稲作における特定動物への防御姿勢は、そうした人と動物をつなぐ関係の複雑さを示すものである。また、昆虫類において子どもの遊びと深いかかわりが認められるのは、これらの生きものが当時の里山を代表する構成種であったことを示唆しているものと理解できる。
1]食物としての動物
水辺に生息する小動物は捕獲が容易で、かつては重要なタンパク源として広く利用されていた。アカガエル類やドジョウを始めとする小魚の類、タニシ類、シジミ等がその代表である。昆虫類ではイナゴ類のほかにカミキリムシ類やクロスズメバチの幼虫が食されている。なお、同じ食物利用であっても一部の地域のアカガエルやスナヤツメ、ミミズ類については、民間薬としての利用が明らかにされた事例であり貴重な伝承といえる。
2]動物の遊び
遊びの事例は25種の動物で確認されたが、クモ類を含めてそのほとんどがいわゆる虫遊びに関するものである。それもセミ類やトンボ類、バッタ類、コウチュウ類等、いずれも里山の生産領域に生息する身近な虫が対象となっている。