日本財団 図書館


表I-2-2 土壌と作物に関する伝承

059-1.gif

注) ◎:栽培に適す/○:栽培良好/△:栽培に適さない

*1:品質がよい/*2:やわらかい/*3:葉肉が厚い/*4:色、形、味がよい

 

(4) 水田稲作

1]稲作と水の管理

狭山丘陵の水田稲作は、丘陵縁辺の低地および谷戸に拓かれた水田を中心に営まれてきた。柳瀬川流域や宅部川流域にはややまとまった水田が広がっていたが、それ以外は小さな谷戸田がほとんどであり、その水の管理=確保をめぐって人びとは相当な苦労を経験してきたようである。こうした状況下では、一時的な渇水対策としてヤマのクズ(落ち葉)をそのまま水田に敷き込んで水嵩を上げる工夫も行われていたことが一部地域の伝承としてのこされている。

2]稲作と生きもののかかわり

水稲栽培では、田の耕起から始まって代掻き、苗代づくり、田植え、除草、追肥、稲刈りという一連の作業が毎年繰り返されるが、こうした作業工程の一部においてそこに生息する生きものが何らかのかかわりをもつ事例がいくつか伝承されている。

表I-2-3はその内容を整理したもので、とくに苗代づくりにおけるスズメやカモ類による食害と出穂期以降の鳥類による食害に対しては、注意を怠ることなく事前に十分な対応策を講じていたことがうかがえる。なお、表中*1のメボシというのは4月下旬に籾を播いてから、発芽期の3日ないし5日間ほど一時的に苗代の水を抜くことをいう。おそらく「芽干し」の意味と考えられるが、これは発芽した幼苗がしっかりと根付いて倒れないようにするためである。このときは鳥にねらわれやすく、網を張って防ぐのが一般的であるが、籾殻を焼いた薫炭を撒くという方法はかなり古い時代からの防御法ではないかと考えられる。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION