1. 地方分権一括法の意義とその問題点
諸井 地方分権一括法が本年4月から施行されるが、これは日本の地方分権の出発点といえる。1980年代までは、中央集権型システムは効率的に運営されナショナルミニマムが達成された。しかし、統一性や画一性を重視するあまり、各地域の住民の多様な価値観や地域の個性が薄れ、かえって無駄が生じることにもなっている。権限や財源や人材を、住民に近い地方に移し、住民自治の形になっていく第一歩。
新井 これまでは、行政がサービスを提供して、市民がそれを受けるという一方通行の構造であったが、今は、NPOの活動のように市民が自己実現を求めて地域で働く場を求めている。いわば市民力というものが開花するのが21世紀ではないか。今後、市民への分権とも言うべきものを実施していくことが必要。そして、そのために、地方自治体はその持っている情報を自発的にディスクローズしていく姿勢を、情報公開条例に明文規定として盛り込んでいく努力をお願いしたい。
貝原 国会が国権の最高機関であり、立法権は当然国会にある。地方分権を推進していく際、自治事務、法定受託事務の枠組みに係る国会の立法について、地方との関わりをどう考えていくかが重要な課題。「地方自治基本法」といったものを制定して、その関係を明確にすべきではないか。
山出 事務権限の委譲はあまり多くなかった。国は地方の声や実情を踏まえて、制度の企画、立案に当たってほしい。そのためにも、地方分権推進法の期限延長が必要。また、より一層の権限委譲等に向け継続的取り組みが必要。
山本 地方分権によって、町村は自立していかねばならないとの意識改革が進むと思う。現在、町村は能力を有しており、地方分権に一層取り組めるようにするために、地方分権推進委員会を存続すべき。また、地域振興のため、町村への権限委譲をもっと進めるべき。
西尾 事務事業の委譲が少なかったという意見が出されたが、そのとおりだと思う。しかし、今回の改革は、地方に対する国の関与を整理縮小し、都道府県と市町村が地域社会にとって最善だと思う方法を少しでも自由に選び、行動する余地を与えようとするものである。行政分野ごとに詳細に点検すると様々なことが変わっている。自分の自治体をよくするためこの自由をどう使ったらよいか、知恵を発揮して今回の改革を活かしてほしい。
2. 自己決定、自己責任による具体的な行政の進め方
横島 自由裁量を行使し、自己決定、自己責任による行政をどのように行っていくべきか意見をお伺いしたい。
西尾 自由裁量が認められるものとして、児童や保護者の学校選択の自由を認める就学校指定の弾力化がある。また、学校管理規則の弾力化があげられる。これをどう活かすかは各自治体にかかっている。
山本 就学校指定の弾力化は地理的事情から町村にとってはあまり有効とは思わないが、自由裁量の拡大は、今後自治体の意識改革につながる。
新井 情報公開と市民参画の仕組み作りが必要。その形として、政策決定過程への直接参加、市民の事業参画、ボランティアの三つがある。自治体の職員に「市民は共に政策を作り、事業も担っていくパートナー」という意識改革がほしい。
山出 都市計画の用途地域の指定という事務権限の委譲により、金沢市では「まちづくり条例」の制定を検討している。これにより、住民と行政の協働による住み良い環境づくりを目指している。そのためには、説明責任や情報公開等の行政能力の向上や、住民意識の醸成が必要と思う。