横島 市町村の自主性の尊重と国からの権限委譲に当たり都道府県の役割が重要だが、このことについてどう考えるのか。
貝原 機関委任事務の多くは、都道府県知事が担当しており、今回の改正により都道府県の責任が重くなる。自治体が担当している国の事務を本当に自治体の事務とし、分権構造の構築を進めることが必要であり、したがって、機関委任事務を廃止し自治事務と法定受託事務とすることは大きな進歩である。なお、自治事務等に法律上問題があれば、改正について国と議論していく姿勢が必要。
横島 今回の分権論議であまり扱われていなかった議会の役割についてどう考えるのか。
諸井 国で基本的な意思決定がなされており、実際には、これまで地方議会で意思決定する内容があまりなかった。これからは自治体に権限が委譲されてくることから、議会も仕事が増えてくることになる。
新井 立法機能、監視機能、公開機能という地方議会の役割が十分果たされていない。議会事務局を独立させ、機能を市民に公開して、市民と一緒に条例や政策づくりを行えるよう議会改革をすべき。
3. 地方財政と市町村合併
山本 地方分権の実現のためには地方税財源の充実が必要。必要な財源確保のためには、新税を設けるなど国民の納得する税制見直しが必要。町村も事務能力は向上しており、合併とは別に、広域連合でお互いに補いながらやっていく方法もある。
山出 市町村の能力に応じた権限委譲がなされるべき。行政が体制を整えて能力を持つために、市町村合併の推進は避けて通れない課題。
貝原 本当の住民参画のためには、多元的な行政権限を持っている組織とか機関があるほうがよい。市町村の規模に応じてどういう仕事を担当するのがよいか判断すべき。
新井 所得税を地方税とするなど大幅な税源移譲を行うべき。そして、財政調整は自治体間協議に委ねてはどうか。
横島 分権論議の中で財源の問題はどのようにまとめられたのか。
西尾 地方六団体から地方分権推進委員会に対し「国の補助事業を廃止・縮減し、その財源を地方の一般財源に切り替えてほしい」との要望があった。しかし、省庁等の反対が強く、また地方公共団体も補助金の廃止にすべて賛成ではなく、国税と地方税の体系を組み替えるような大きな税源移譲の問題にならなかった。これからは、まず税の組み替えをやって、その上で補助金・負担金を削減する方法を採らざるを得ない。
横島 地方分権一括法の4月施行を直前に控え率直な印象は。
諸井 いよいよ地方分権のスタート台に立ったと言うのが印象。これから地方分権を推進することにより、プラスの面が見えてくると思う。
4. まとめ
横島 地方分権の主役は住民であり、市民権の拡大が地方分権の思想を定着させる。分権の柱を四つにまとめてみると、対等・協力という基本理念の変更、機関委任事務の廃止、組織の強化、そして住民参加である。新しい民主主義完熟の夜明けに向かってのスタートとしてほしい。