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第4に、公費負担は総給付費の2分の1とする。うち、国、都道府県、市町村の負担割合は、2: 1: 1である(それぞれ総給付費の25%、12.5%、12.5%である)。

第5に、要介護認定を受けた者にたいして、施設・在宅サービス等を給付し、要支援者には要介護状態の発生予防という観点から在宅の医療サービス、福祉サービス等を給付する。

第6に、自己負担は、保険給付の対象費用の1割とする。施設での給食負担にっいては、医療保険制度と同様に標準負担額(平均的な家計において負担する費用に相当する額)は利用者負担とする。施設給付は、特別養護老人ホーム29万円、老人保健施設32万円、療養型病床群、老人性痴呆疾患療養病棟その他の介護体制が整った施設は43万円、在宅給付には要介護度に応じて6万〜29万円である。

第7に、第1号被保険者が保険者の努力の及ばないところで負担が過重にならないように、国の負担のうち5分の1が財政調整のために市町村に交付する交付金に充てられる。次のような場合が理由になる。1]要介護リスクの高い後期高齢者の加入割合の相違、2]高齢者の負担能力(所得水準)の相違、3]災害時の保険料減免等特殊な場合、の3つである。国民健康保険における財政調整交付金に類似している。

 

2. 介護保険制度案の財政調整の仕組み

介護保険制度案によると、平均的な市町村の介護保険の財源構成の大枠は、次のようになる(図4を参照のこと)。自己負担を除いた給付総額の17%が第1号被保険者の保険料収入、33%が第2号被保険者の保険料収入、25%が国、12.5%が都道府県、12.5%が市町村である。これだと公費負担が給付総額の50%、保険料負担が給付総額50%になる。国の負担の一部(給付総額の5%)が保険料負担の均等化のために、市町村への交付金として使われる富裕な老人が多い市町村では、第1号被保険者の保険料割合が給付総額の22%、所得の低い老人が多い市町村では第1号被保険者の保険料割合が12%、国の財政調整の負担割合が10%になることもありうる。

介護保険制度案と国民健康保険の違いは収入面からみると、次の点にある。現在の国民健康保険の徴収努力を要する保険料部分が全体のおよそ40%なのにたいし、介護保険制度案は17%(年金からの特別徴収およそ12%込み)と半分以下である。介護保険はより多くを財政調整にゆだねる制度である。

介護保険制度の財源は、一般財源や保険料などさまざまな財源からなりたっているために、所得分配にかんする影響をトータルとして捉えることは困難である。そのため、各財源別に、財政調整の意味および負担の公平を考察すると次のことがいえる。

第1に、平均的な市町村では自己負担を除いた給付総額のおよそ83%が、市町村住民の直接的な負担以外で賄われる。うちわけは、国が25%、都道府県が12.5%、市町村が12.5%、第2号保険者からの拠出金が33%である。拠出金は給付実績に対応するため、この83%はいわば支出誘発的な補助金である。現状のようにまず供給体制を整備することが第一目標である段階では、支出誘発的な補助金でよいが、中長期的には問題がある。

 

 

 

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