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イ 高齢者は従来社会的弱者ととらえられがちであるが、実際上は必ずしも正確ではない。

まず、世帯主年齢階級別の所得金額の状況を見ると、1世帯あたりで見るとかなりの格差があるが、世帯人員1人当たりでみるとその格差が縮んでおり、あまり差がないような状況となっている。

また、年齢階級別に貯蓄あるいは家計資産の状況を見ると、高齢者ほど貯蓄資産額が多くなっており、ストック(資産)はかなり保有している高齢者が少なくないということである。

これらを踏まえて、個人住民税のあり方や地方消費税の充実についても議論すべきではないかということが論点となる。もちろん、個々の高齢者を見れば様々な状況があることから、それらを踏まえた配慮は歳出面を含め必要となろう。

ウ 一つの考え方として、世帯内の無償のサービス提供の減少を地域福祉の担い手である地方団体におけるサービス提供で補うとすれば、その無償サービス見合い分を税で徴収するという考え方がでてくる。この場合、まず個人住民税の充実が念頭に置かれるが、そこに住んでいる人だけではなくそこで活動している人もその地方公共団体が提供しているサービスを享受することとなることから、地域に参加している人に税負担をしてもらうという観点で、生産活動、分配、支出の各段階で負担を求めることが考えられる。

第一に、生産活動の段階で負担を求めるという観点から、事業活動の規模に応じた課税すなわち事業税の外形標準課税化が必要となってくる。

第二に、分配段階である所得に個人住民税という形で負担してもらう。

第三に、支出段階すなわち消費に対し地方消費税を負担してもらう。

ということがそれぞれ位置づけられてくるものであり、地方団体の財源である地方税としてそれぞれの税目の充実が検討課題となってくる。

この点については、後記の神野教授の論文を参照。

エ 福祉といった高齢社会の行政課題は、従来は生活困窮者に対象を限定していたが、現在では大きく住民全体を対象とするサービスに変わってきており、普遍的かつサービスを受けるか受けないかの選択が可能となっている。

 

 

 

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