例えば、空港会社はインターネットでの公募による海外企業の事業参入促進や性能・ランニングコストと機器価格を数値化して評価する入札制度での物品調達等コスト削減のための新しい工夫を次々と採り入れている。
さらに、旅客ターミナルについてもコストと収益性のバランスを重視し、需要に応じて増設できる小さなターミナルで開港の予定とも聞いている。
このように、空港会社は民間がイニシアチブをとり、より安価で利便性の高い空港となるよう、さまざまな提案や創意工夫のある事業計画によって、2005年の開港を目指している。
しかしながら、空港会社の出資金に無利子貸付金を併せた無利子資金の負担割合は、国: 自治体: 民間=4: 1: 1であり、人材もそれぞれが出し合うという事業スキームをとっており、これは日本の代表的第三セクターのスキームに他ならない。
もちろん、第三セクターであったとしても形式的にはPFIの事業主体となりうるが、中部国際空港整備事業には会社設立にあたっての公募や選定の手続きは一切なく、PFIで検討すべき事業者による事業提案や公共による提案審査という手順も経ていない。
また、資金調達面でも国、自治体、民間がお互いに資金を出し合った上で、残りは政保債や開銀融資等からの資金調達でまかなうことを予定しており、PFI事業を資金面から支えると言われている民間によるプロジェクトファイナンスも実施されていない。
さらに、空港会社が中部国際空港に要する土地や施設を所有し、管理運営を行えるよう「中部国際空港の設置及び管理に関する法律」が特別立法され、国や自治体からの出資の他、国による債務保証や必要な監督まで認めており、官と民との間でのリスクと責任分担の明確化が図られているとも思えない。
したがって、空港整備という特殊性を考慮しても、中部国際空港整備事業は、PFIであるともPFIモデル事業であるとも言い難いのである。
もっとも、この整備事業には、民間主導、技術ノウハウの活用、効率性の追求といったPFI的考え方が生かされているということは言えよう。