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しかしながら、現実問題として、現在の日本の公共事業を取り巻く商慣習や法制、税制上の制約、公有財産制度や補助金制度、さらには終身雇用を前提とした公務員の雇用体系などを概観してみるだけでも、日本において行財政改革に結びつくような英国型PFIを実施するためには、かなりの時間と官民双方の粘り強い努力が必要になるであろうと思われる。

したがって、我々行政に携わる者がまず取り組むべきことは、大きなPFIプロジェクトを実施する前に、英国で浸透しているPFIの基本スキームを十分に分析し、日本の実情と照らし合わせた上で、事業者選定、契約、リスク分担、情報開示、発注や資金調達等それぞれの機能ごとに優れたPFI的手法をできるだけ採り入れ、従来型の公共事業の枠組みの中でも、より合理的で、効率的な事業が実施できるよう常に改善していく努力を惜しまないことではないかと考えている。

 

2 中部国際空港に見るPFI的考え方

 

次に、本市の事業ではないが、中部地域を代表するプロジェクトである中部国際空港整備事業を例にして、そのPFI的な考え方について具体的に考察していくことにする。

中部国際空港整備事業は、PFIを先取りした事業ではないかと言われているが、そのPFI的な手法を整理することによって空港事業の位置づけを明らかにし、PFIと第三セクターとの違いについて言及していきたい。

中部国際空港の事業主体である中部国際空港株式会社(以下、空港会社という。)の主要な役職には民間からの出向者が就任しており、全体の約3分の1の社員が民間出向者で占められている。

また、会社のトップを民間から迎えており、会社のカラーとしては民間色が非常に強く出ているといえる。

 

 

 

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