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さらに、域際収支は産業連関表上マイナスであり、市民所得についても、企業所得の割合が他の大都市に比べて低いなど、民間の力を高めていくことが課題となっている。(※5)

このため、公共に代わって市民へのサービス提供の主体となる事業者が、分野によっては地場に求められない状況にあり、NPOやNGOと同様、企業の育成についても、行政が積極的に支援しなければならないという難しい側面がある。

 

札幌でPFIの導入を図るには、以上のようなことを念頭に置きながら検討する必要がある。

PFIの基本理念であるVFM(支出に対して最も価値の高いサービスを受け取る)という考え方は、行政の立場から言うと、行政・民間を問わず、同質のサービスの提供に係る費用の総額を安価に提供できる主体が基本的にそれを担うべきである、ということになる。

しかし、民間の立場から言うと、提供するサービスの内容が何であれ、適正な利潤があげられるか、あるいは、それが困難な場合、附帯する事業でその分の投資を回収できるだけの利潤があげられるかが問題となる。

このように考えると、他都市でPFI方式が成立するような事業内容であったとしても、札幌の場合に、スケール・メリットが発揮されるほどのプロジェクト規模かどうか、附帯事業を行ううえでの立地条件の比較優位性(利便性、効率性)があるかどうか、担い手となる民間事業者がいるか、あるいは、進出が期待できるか、などを十分に検討する必要がある。

このような点を踏まえながら、以下に紹介する事例等をお読みいただきたい。

 

※2 道路や公園については、必要な整備を民間が行ったうえで市に移管するという手法をとったが、学校施設については、基本的に市が整備し、民間が整備したものを買収する手法はとらなかった。

※3 郊外部での宅地開発(宅地造成)以外にも、当然、再開発事業や区画整理事業、鉄道高架事業等に積極的に取り組んできた。

※4 都道府県地価調査結果による。

※5 大都市比較統計年表による。

 

 

 

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