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3) 課題及び留意点

公共と民間双方の共同出資による第3セクター方式は、公共と民間の責任の所在、リスク負担が明確でないとの指摘がなされている。また、公共が出資することにより、公共性が強調され、利益追求の姿勢が抑制される場合もある。出資会社内で債務保証などの運営資金以外の負担が不明確となり問題がでる場合もある。

官民のリスク分担が暖昧になることが多く、民間事業者が公共セクターに最終リスクの負担を過度に依存する傾向があり、その結果、経営悪化時に公共セクターに大きな負担がかかってくる危険性がある。特に、バブル崩壊と打ち続く景気の低迷の中で、経営破綻の現実に直面している第3セクターも多々あり、地方財政の厳しい状況により全国各地で第3セクターに対する公的支援のあり方について問い直されてきている状況にあるといえる。

したがって、今後の課題としては、長引く景気の低迷の中、第3セクターの経営についての今後の方向も、なぜ第3セクターでなければならないのかといった果たすべき役割や意義、また位置付けを明確にするなど、原点に立ち戻って考える必要があると思われる

4) 事例

本市の開発型の第3セクターの事例としては、西区岩崎橋地区に、地区の核として、また大阪の中核的施設としてシンボル性の高い商業・業務空間の形成に向け、スポーツ、音楽等の各種イベントが開催できる多目的ドームである「大阪ドーム」の建設・管理運営をしている株式会社大阪シティドームや、住之江区咲洲地区に、国際流通センターと多文化交流型のアミューズメントゾーンを併せ持つ複合施設「アジア・太平洋トレードセンター(ATC)」を建設し、管理運営しているアジア・太平洋トレードセンター株式会社、などがある。ここでは、前年度も紹介したルネッサなんば(湊町地区)について紹介する。

 

◎ルネッサなんば(湊町地区)

ルネッサなんばは、旧国鉄貨物ヤード跡地を中心とした約17.5haの大阪都心「ミナミ」に残された大規模な開発用地であり、道路・鉄道等の交通条件に恵まれ、関西国際空港とも直結しており、このような立地条件を活かし、「国際集客都市大阪」の玄関として、また、国際化、情報化に向けた新しい高度な都市機能を有する開発拠点として整備を図ってきたところである(図-5)。

本地区を含む周辺地区は、戦災復興土地区画整理事業により、道路や公園等の公共施設が整備されてきたが、昭和60年3月に旧国鉄貨物ヤード約5.3haが廃止され、同年12月に定められた「関西国際空港関連施設整備大鋼」に土地区画整理事業、関西本線連続立体交差事業、阪神高速道路湊町ランプ、CAT等の都市内空港関連施設整備の推進が位置付けられ、平成元年2月には本プロジェクトのマスタープランである新都市拠点整備事業総合計画が建設大臣の承認を受けて、同年3月には本地区の開発を推進するため、プロジェクト推進のコーディネータであり、CAT機能を備えた複合交通センターの建設主体である「株式会社湊町開発センター」が本市出資(出資率: 51%)の第3セクターとして設立され、事業化の第一歩を踏み出すこととなった。その後、プロジェクトを支える各種公共施設が都市計画決定され、事業着手されるとともに、第1期開発としてプロジェクトの先導的な役割を担う複合交通センターである大阪シティエアターミナル(愛称: OCAT)の建設に着手し、他の関連事業などとともに平成8年3月にオープンした。より市民に親しまれるまちを目指し、まちの愛称を公募により「ルネッサなんば」とした。

 

 

 

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