3. 実施段階における課題の整備・検討
(1) 法・制度上の課題
1]PFI法による民間事業者との契約における公法上のリスク分担のあり方
自治体が市民に公法上の責任を負うリスク(国家賠償法との関係)の明確化が必要となる。
2]公物管理権(責任)など規制緩和の推進と条例制定の必要性の検討
公共施設の管理を原則的に公共セクターに限定している現行法令との関係で、PFI事業者の法的位置づけを明確にする必要性が高い。また、条例制定の必要性も検討を要する。
3]国有財産・公有財産の使用及び権利設定の改善
現行は、行政財産への私権の設定は原則禁止されている。目的外使用許可における一年更新の見直し、また、地上権設定先を限定列挙している政令の改正が必要である。
4]事業にかかる市会議決や報告のあり方の既存法との関係整理
契約及び債務負担にかかる予算の議決が必要となる。なお、地方債の予算規定、外郭団体の経営状況を報告する義務規定、情報公開条例などとの法的な関係を整理する必要がある。
5]民間事業者及び自治体への財政上・税制上の支援等のあり方の検討
民間事業者に行う国庫補助金等の財政上の支援(国庫補助金等)及び税制上の支援(固定資産税の減免等)の検討が必要である。併せて、国は自治体に対する地方債の発行や地方交付税措置の検討が必要となる。
(2) 実施方針策定上の政策課題
1]特定事業の選定に当たって、官民の役割分担のあり方の明確化
長期にわたる契約となるため、将来の社会経済情勢の変化も踏まえつつ、官民の役割分担について、一定の方向性を示すことになる。
2]特定事業や民間事業者の選定等に当たっての市民参加と議会合意形成のあり方の開発
事業効果などの客観的な評価結果の公表が課されている中で、受益レベルの設定や市民ニーズの変化にあたって市民参加や議会の合意について、新しい手法の開発が必要となる。
3]民間事業者の選定に当たっての市場原理と地域経済振興の観点の調整
自由競争や国際化の中で、PFIの導入に対応可能な民間事業者は限定される。WTOによる制約もある中で、地元経済振興及び地元企業の育成をどう位置付けるか、検討が必要である。
(3) 事業推進上の課題
1]サービスの内容・水準の定量的評価ノウハウの獲得
サービス内容・水準の定義等のノウハウを蓄積し、事業内容を明確に規定する必要がある。
2]PSC及びVFMの算定ノウハウの獲得と正確な算出
従来方式による事業費等(PSC)及びVFMの算定ノウハウを獲得し正確に行うことが必要である。