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20.2.5.2 事業者のデフォルトに際して支払われる補償の金額は、関係当事者の全員にとって重要な商業上の問題であり、PFIはこれまで多種多様な規定を目にしてきた。まず道路プロジェクトでは営業許可期間の間は、いかなる時であれ、補償が提供されたことはいっさいない。刑務所プロジェクトでは、建設期間中は一切補償が出司れない。病院プロジェクでは多種多様な算定方法に立脚しており、これらの算定方法は、建設期間中はたいていの場合、矯正費用より少額の資本費用に関係づけられ、営業期間中は、将来的キャッシュフローのNPVに関係づけられている。また、いくつかの契約では、優先債務の満額支払いが(明示的であれ、暗示的であれ)事実上補償されている。

 

20.2.5.3 事業者のデフォルトによる終了の際に合意された補償のレベルは、当局の利益を保護することと、事業者に対しそのデフォルトを理由に過大な制裁を課さないようにすることとの間でバランスを取るべきである。また、優先債権者はただ終了時の支払いをあてにするのではなく、プロジェクトに介入し、プロジェクトを免責することにより、みずからの未払いの負債を支払おうとすることを奨励されるべきである(【30. 直接契約】を参照のこと)。

 

20.2.5.4 “いっさい補償なし”のモデルは、事業者のデフォルトに際し、貸主はプロジェクトに介入し、プロジェクトを成就させるべきだという、もっともな関心によって強く推進されてきた。しかしながら、そうしたモデルは、公共部門に対し、終了が発生した場合に棚ぼた式の利益を求める(例えば、価値ある資産を引き継ぐ)義務を負わせる。また、そうしたモデルは、入札者たちに、危険負担価格、遅延損害金、および支払い責任の制限につき、これらをみずからの下請業者に求める、保守的なアプローチを取ることを余儀なくさせることにより、公共部門に対し、プロジェクト費用の増大をもたらすこともあるかもしれない。

 

20.2.5.5 一方、将来的キャッシュフローのNPVにもとづく算定法は、取り決めるには極めて複雑かつ困難であることが判明している。実際、デフォルトで完遂されてないプロジェクトの履行履歴(および、それゆえ将来的履行への期待)、契約期間を通して当局に発生した余分な費用もしくは事業者に対するリスク移転(特に、プロジェクトの生涯費用に関連する)のいずれも、完全に考慮に入れられる見込みはない。同時に、NPV算定法にもとづく支払いが優先債務には満額を支払うに十分な場合、優先債権者には不調のプロジェクトを免責するというインセンティブが乏しい。このため、別途の場合なら回避できたはずの終了という結果になりやすい。これは、当局と事業者の損害になるだろう。

 

20.2.5.6 いくつかのプロジェクトは、矯正費用を差し引いた未払いの債務にもとづき妥協の道を模索してきた。しかしながら、プロジェクトは、高度に他人資本を導入したおかげで出資金を割合的に多く持つ事業者によって融資されている(【20.2.6 市場価値】を参照のこと)のに、このアプローチはその事業者を冷遇する。これはまた、膨大な時間と労力を費やす必要があるという欠点を持つし、“介入”期間に起きることについては指令的に過ぎて取り得ないアプローチかもしれない(このような定義が用いられる場合、当局は、たいへん適切なことに、優先債務が段階的に拡大する範囲を限定したいと思うからである)。

 

 

 

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