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そこで相手の抵抗が強いですし、そう思うようにいかないということになりましたので、補助事業の廃止というものがごくわずかな範囲に留まってしまいましたから、それを一般財源に替えるといっても、国税と地方税の体系を組み替えるような大きな税源移譲問題にはまったくならないで終わってしまったということだと思います。

もしこれからもう一度考えるとしても、今、国税で吸い上げておいて、補助金・負担金という形で地方に配っているものを結局はそれをやめるということになるのでしょうけれど、そちらから攻めていったのでは、また同じ失敗をするのではないかという気がいたします。やるとしたら、ある意味では非常に乱暴ですが国税と地方税の組み替えをやって、お互いの取り分を先に変えてしまう。その結果、国の方は補助金・負担金に回していくお金がなくなりましたというやり方に切り替えざるを得ないのかもしれません。

地方分権推進委員会が作業を始めたころには、そういう方法というのはとても受け入れられなかったのではないかと思いますが、それ以後今日までの間に、国の財政危機の破たん状態とか地方財政の緊迫状態の程度がまったく違ってきましたから、国と地方を通じる財政危機状態は非常に深刻になってきていて、何らかの手を打たない限りどうにもならないということは、皆さんがわかっている状態になってきているということ。

それからこの不況の中での税収減で、中でも都道府県税に非常に大きな矛盾が出てきている。かつて豊かな都道府県だと言われた所ほど厳しい財政危機になっている。これが都道府県税の構造として、やはりあまりいい構造ではないのではないかということが、多くの方々に認識されているという段階になってきましたから、これからやるとすれば、やはり補助金を削減するという話から始めるのではなくて、税制のあり方そのものからもう一度考え直すという方から議論をしなければいけないのかなという感じを持っています。

 

【横島】この税制の問題、財源論というのは、実はこれから地方分権が実施されるステージが進めば進むほど、本気の議論として私は相当大きな問題を抱えてくるだろうと思います。その意味では重大な宿題になっているわけです。

では、総まとめとして諸井委員長、今日のご議論を聞かれまして、地方分権の4月施行という直前での率直な印象を一言うかがえませんでしょうか。

 

【諸井】最初に申し上げたように、中央集権できた日本の国が、いよいよ地方分権のスタート台に立った、というその印象には間違いがないなという気がいたします。ただこれは出発点ですから、不十分なところがたくさんある。ご不満な点がたくさんある。これもよくわかりました。やはりこれから皆さんが熱意を持って地方分権を進めていく。そのことが皆さんの生活にも非常にプラスになってくるということが、だんだん見えてくるんだろうと思います。そういう意味で出発点をつくったことは間違いではなかった。また出発点に過ぎないというわれわれの認識も間違いではなかった。そういう感じを深くしております。

 

 

 

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