ただ現段階では、475の法律改正に基づく、政省令などがなかなかはっきりとしておらず、そのため、地方自治体の条例化も遅れている状況にあり、まだ十分な取り組みがなされていないというのが、現実であろうと思います。
多くの自治体にあっては、これまで、事務を委任した国の方を向いていろいろな仕事をしていたような部分が「ない」とは言えないと思います。地方分権一括法の実をあげていくためには、ここの部分を根本的に変えて、住民サイドの視点に立った考え方で、地方自治体の事務を進めていくことが大切です。
また、自治事務とはいえ、法律その他によって枠組みが決定され、それを実施するという部分を自治事務となされている部分がかなりあります。そういう部分につきましては、自治事務とはいいながら、受動的にならざるを得ないのですが、地方自治体といたしましては、別に地方自治体は国から離れてサービスをするわけではありませんので、行政サービスについて、協働して住民サイドに立った制度を立案し、実行していきたいと考えます。そのためには、私たち自身が担当しつつ、その制度のあり方について、いろいろな企画や立案をし、もし法律的に問題があるとすれば、法律の改正等について政府あるいは国会と議論をしていく、そういうアクティブな発想と行動をとる必要があるのではないかと思っております。
【横島】ありがとうございました。この辺の自己決定、自己責任の議論は時間をいくらかけても十分にはならないと思いますので、残念ながら終わりにさせていただきたいのですが、この自己決定のところで一つだけ確認しておきたい。会場にもかなり地方議会議員の方のご出席が多いようにうかがいます。諸井さんにうかがいたいのですが、議会の役割というものが、今回の一連の分権論議の中で、どちらかというと重く扱われていなかった。忘れていたとは申しませんが、比較的量が少なかったような気がいたします。個人的なお考えも含めて、議会の役割をどのようにお考えでしょうか。
【諸井】今、住民投票みたいなものがジャーナリズムではたいへん大きく取り上げられますが、制度としては、県であれ、市町村であれ、議会というものが意思決定権を持っているはずです。ただ今までは、先程からのご説明もたくさんあったように、基本的な意思決定を実は国がもうすでにしてしまっている。その意思決定の結果を伝達してきて、それに基づいて仕事が行われている。だから議会のレベルで意思決定すべき内容というのが、実はあまり残されていなかった。
そういう状態ですから、議員の方々も、脾肉の嘆をかこっておられたんでしょうし、たいへん失礼な申しようかもしれませんが、住民の目から見ても議会が何かを決めた、変えたというように映らないのではないか。
ですから、これは自治体に権限がどんどん移されてくる。国から都道府県に移されてくる。今度あまり注目されていませんが、都道府県から市町村へ、それぞれ話し合いによって権限を移すということはどんどんできるわけです。ですから、先程山本町長さんが「七つしかない」と言われましたが、それ以外にもどんどん移す可能性はあるわけです。市町村によって状況が違うわけですから、それを見ながら移していくわけです。そうやってどんどんどんどん移していけば、議会のやるべき仕事はどんどん増えてくる。そうすればまた市民の議会を見る目も変わってくる。選挙のあり様も変わってくる。投票率も変わってくるというようなことになっていく。それが流れではないかと私は思っています。