【貝原】今回の分権の中心は機関委任事務の是正ということですが、これに関して、知事と市町村長とで若干差があります。知事が担当している機関委任事務が多く、市町村長の場合が比較的少ないというのが実情でしたから、そういった意味では今回の改正は、都道府県に関わる責任が非常に大きくなっていると思います。
象徴的によく「3割自治」と言われておりました。ご承知の通り、国民が負担する税収の3割が自治体の地方税であり、7割が国税であります。したがって、地方はなかなか自治的な仕事ができないという指摘がなされていました。一方、歳出は行政サービスの担当からいうと逆転しておりまして、地方が7割を担当し、中央政府が3割を担当するという状況です。正確に言うと少し率は違いますが、象徴的に言うとそういう状況であったわけです。
連邦制をとっているような国、たとえば非常に分権構造を進めているアメリカが、歳出、行政サービスを連邦と州以下の政府でどのように分担しているかを見てみますと、連邦政府の方が5割、州以下の地方政府が5割となっています。歳出の面からいうと、日本の自治体の方がより分権化した構造になっているわけです。
ところが、なぜ日本の場合は「3割自治」と言われるかというと、地方自治体が担当している7割の仕事を行うためには、国から4割の財源が地方へ移転される必要があり、財源を移転されて地方自治体が担当する4割の行政サービスが、まさに国の事務であるわけです。
そういうことですから、逆に地方分権を進めるためには、先程西尾先生が言われましたように、実際自治体が担当している行政サービスを国の事務ではなくて本当の自治体の事務にすれば、かなり進んだ分権構造になっていくのではないかと思います。そういう構造になっている大きな原因である機関委任事務を、自治事務あるいは法定委託事務にすることで、中央政府と地方政府との関係をかなり是正することになります。これはたいへんな進歩であると思います。
そういう中で市町村長と知事との立場からいうと、知事の方がその構造改革について大きな責任を持っていかなければいけないわけです。私どもも先程西尾先生が言われたことを含め、自治事務になった行政サービス一つひとつについて、その考え方を煮詰めていかなければなりません。