市町村に関係することとして、一つは「就学校指定の弾力化」があります。どの児童・生徒はどの小学校、あるいは中学校に入学し、通学すべきかということを決めるということです。通常どこでもやってまいりましたのは、市内に10校小学校が仮にあれば、その小学校を中心にした10の通学区域に市内を分割する。そして、この区域に住んでいる児童・生徒は第一小学校へ、こちらの区域に住んでいる方は第二小学校へ、という就学校の指定をしてきたわけです。この仕組みで言いますと、児童・生徒あるいはその保護者には学校を選択する権利が認められていないという制度です。
しかし、児童・生徒あるいは保護者に、学校選択の自由を認めるべきではないかという議論がだんだん強くなってきております。そこで、文部省は、「従来のような通学区域制度に必ずしもよらなくてもよろしい。今後文部省はそういう指導は一切いたしません。そこで現場の学校、あるいは市町村教育委員会で、慎重にお考えになって、いかなる制度を採用されても結構でございます」このようになってくるわけです。
ご承知かと思いますが、すでに東京都品川区などでは、小学校について都立高校でやっているような学校群制度に似たようなことを始めようとしているわけです。学校を親が選べるという形に持っていこうとしているわけです。
全国の市町村の小中学校が一気にそうなるとは思いませんが、仮に原則として通学区域制度で従来通り、原則はいきたいということだったとしても、特別な事情がある児童・生徒については、例外を幅広くと言いますか、弾力的に許容していかなければならないようにだんだんなっていくのではないか、と思われます。そうだとすると、自分の町ではどういう場合には別の学校に通うことを許すか。あるいはどういう場合は許さないかといったルールを、それぞれの市町村ごとに決めていかなければならない。隣の町と違うルールであって一向に構わないわけです。それぞれの市町村が、そのルールをこれからは自分で決めていかなければならないということになるわけです。これはかなり大きな問題だと思います。
もう一つ学校教育関係で、「学校管理規則の制定を弾力化します」と文部省の表現を使えば言われるわけです。学校管理規則というのは教育委員会が制定している規則ですが、教育委員会と個別の校長先生以下の学校当局者、学校の管理者との権限関係を定めている規則です。教科内容その他のことにも関わりますが、学校の施設の管理運営にも関わるわけです。
これにつきましても、全国的なモデル準則のようなものが今までありまして、ほぼこれに従いなさいという指導が徹底されておりましたので、全国どこの市町村教育委員会の学校管理規則も、ほとんど中身は同じ決め方をしていたということです。ですからそこに何ら差がなかったということです。しかし、そのような必要はもはやないので、「どうぞそれぞれの市町村で、もっとも適切だと思う関係に、教育委員会と学校の関係をお決めください」と自由化、規制緩和をしてくるわけです。
そうしますと、ここにはさまざまな問題が含まれています。「学校施設の開放問題」と従来言われてきたようなさまざまな問題に関して、どのようなことは、教育委員会で決定するのか。どのようなことは、個別の学校の判断に委ねられるのか。そこで何かトラブルが起こった時に、責任は各学校の管理者にあるのか、教育委員会にあるのか等々といった関係のこともあります。そういったことに関連して、最近は文部省の方が、「学校評議員という制度を取り入れてはいかがでしょうか」などということさえ言い出しているわけです。学校の教育に限らず地域の教育のことも含めて、学校をもう少し開かれたものにしていくということが必要ではないか、という問題が出されてきているわけです。