今回の分権改革に盛り込まれた大半の事柄は、これまでも都道府県、市町村が担当していた仕事をそのまま続けていただく。ただし、都道府県で担当する仕事、市町村が担当する仕事に対して、国あるいは都道府県からさまざまな広い意味での関与がなされている。通達、通知による指示から始まって、さまざまな形での枠づけ、干渉、介入、口出しが行われていて、それにしたがって都道府県、市町村は仕事をしなければならないということになっているために、地域社会の特殊条件を反映した自分の個性的な仕事の仕方というのがやりにくくなっていたという側面を何とかして緩めて、都道府県、市町村に少しでも自由な判断と行動の余地を与える。いわば一番自分の地域社会にとって最善だと思う方法を選べる。選択できる余地を極力広げよう。そういう形で地方自治を充実しようという工作が大半を占めている。そういう分権改革になったということだと思います。
この点が不満だというご批判を受けているということです。冒頭に委員長が学校教育関係のことで若干の例示を挙げられましたが、広い意味での関与の縮小ということでも、それぞれの行政分野にさまざまな自由が、都道府県、市町村に生じてきているわけです。
問題は、ここが非常にわかりにくいわけですが、今回の分権改革の結果というのは、都道府県と市町村に今までよりも自由を与えたということなのです。与えたのは自由だけであって、新しい仕事を担当してくださいといった部分はあまりないわけです。そうすると都道府県、市町村の方々がせっかく与えられた自由を活用されないと、お使いにならないと、何も変化は起こらないわけです。特に住民、国民の目から見ると、何一つ変わらないということになってしまうわけです。この与えられた自由を、「あっ、そういうことができるようになったのか」というようにお考えになって、いい知恵を出されてお使いになられた時に、初めて住民にとっては変化が生じるということになるわけです。
住民に対する効果が非常に間接的になっているという点が、今回の改革のわかりにくいところではないかと思います。ぜひとも今回の改革で何が自由になったのかを、それぞれの行政分野ごとに詳細にご点検いただきたいと思います。点検してご覧になると、意外にさまざまなことが変わってきているということにお気づきになるのではないかと思います。その自由をどう使ったら自分の自治体が良くなるかということに、ぜひとも知恵を発揮してこの改革を活かしていただきたい。当事者としてはそう思うわけです。
【横島】ありがとうございます。見かけの分権ではなくて、精神の中に潜められている自由裁量の分野を、どこまで自主的に活用するかというところに決め手があるというのが西尾先生のご説明です。第二ステージでこの辺のことが議論の中心になるわけですが、一つだけ押さえておきたいのですが、市長、町長からお話があった「いつまで続くんだ」ということです。このお話は諸井委員長、これは政治の判断もあると思いますが、当面はどういうスケジュールになるわけでしょうか。
【諸井】私どもの地方分権推進委員会というのは、法律と同じように5年間の期限で仕事をやってきたわけです。5年というのは長いようですが、その間に勧告を出して、その勧告が政府の計画となり、その計画が法律になり、その法律がさらに政令や省令になり、実施に移されていく。そこを確実に見守っていくというところまでを5年間の間にやらなくてはいけないということです。ですから私どもは会議だけでも500回ぐらいやっていますし、各省庁との折衝を実は私ども委員自身でやってきたわけです。これも200回から300回ぐらいの回数でやってきているわけです。そうやって地方六団体の方が一致して要請をなさった機関委任事務の問題、必置規制の問題、権限委譲の問題、補助金・補助条件の問題、あるいは税財源の問題、そういうような問題について、全部を一応各省庁とやり合って、結論を出して勧告にし、そして今日の法律まで来ているわけです。