そこで、一つ二つ申し上げてみたいと思います。一点目は先程申し上げましたように、地方分権という制度をつくることによって、町村が自立をしていかなければならないという精神的な、あるいは意識の改革ができることは確かだろうと思います。これはかなりの効果が出てくると思っております。
もう一つはいつも言われますが、市町村間の格差が大き過ぎます。この市町村間の格差は、分権を進めることによってなくすことができるのではないか。言い換えれば、市町村格差がなくなるような分権を考えていくことが必要ではないかということが考えられます。
それから、次に地域振興というのは土地利用が一番大事なことです。地域振興でそういうことが大事なものにもかかわらず、土地の利用についてはぜんぜん分権がなされておりません。雑な話で恐縮ですが、たとえば、田を転用したいという場合、あるいは特に山林などは町村に特有のものですから、山林の利用などについても分権の方向が示されておりません。ですから町村にとっては、住民に一番身近なそういう行政が、依然として従来のままであるというところに大きな疑問があるわけです。
これらが本当の意味で分権されていきますと、私が最初に申し上げた町村が自立への道をどんどん進んでいくことができるのではないだろうかと思います。ですからこういうように町村に本当の分権ができるようにするためには、この地方分権推進委員会というのは継続しておくべきだろうと思います。ここでやめるのは、町村としては絶対に賛成ができない。地方分権推進委員会というのは、継続してなお最終的な、言い換えると分権型社会がこれでできあがったという時まで私は続けていくべきだと思っているところでございます。
最後に、一つだけ言わせていただければ、町村は能力がないので分権をしようとしても、あるいはやってもできないだろうと言われているようなところだけは、ぜひとも訂正をして欲しいと思います。今は能力もちゃんと備わっておりますし、それだけの人材も確保ができておりますので、町村でも分権を十分やり得るだけの能力を持っているということを、もう少し考えて欲しいなと基本的には思っているところです。
【横島】ありがとうございます。山出市長、山本町長から期せずして「分権不十分だ。もっとやってくれ」というお話。それから「もっと続けて審議をしてくれ」と強い要求が出ております。これらのお答えも含めて、最後になりましたが国際基督教大学の西尾先生、よろしくお願いいたします。
【西尾】今、山出市長と山本町長から期せずして、今回の分権改革では事務事業の委譲が意外に少なかったのではないかというご指摘を受けております。確かにその通りであります。国が今まで担当しておりました事務事業の一部を都道府県に移すとか、都道府県がこれまで担当していた事務事業の一部を市町村に移すというような、事務事業の担当者を代えるといったような種類の改革が今回は意外に少なかったわけです。