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今回の地方分権一括法で、中央政府と地方政府との関係について大きな改善がなされましたが、たとえば自治事務とされた行政サービスについて、基本的には国会が法律で大きな枠組みを決めます。これは国会が国権の最高機関であり、立法権を持っていますので、当然のことでありましょう。しかし、本当に地方分権を進めていくことになりますと、国会の立法のあり様についても、地方との関わりのなかで考えていく必要があると思います。ここのところが非常に大きな課題なのではないでしょうか。

国政というのは、まさに国全体に関わることを議論するのだということであれば、国会はそれを中心として議論すべきだし、選挙はそれを争点として戦うべきです。そうでありながら地方の自治事務であれ、法定受託事務であれ、法律で枠組みが決められるということになりますと、分権との流れというものをどのように理解していくのか、そこら辺の考え方がきちんと整理されないと、なかなかわかりにくいのではないかと考えます。そういった意味で、私は「地方自治基本法」といったものをきちんと制定し、その関係を明確にしていかなければ、今後なかなか難しいのではないかという気がしております。

 

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【横島】ありがとうございました。地方分権の基本の確認が必要だということの論旨の中から、行政分野における分権の成立というのは当然のことながら、立法分野においての分権に対する配慮、あるいはシステム化ということが基本的には必要なんだというご指摘だったと思います。「地方自治基本法」というご提案も具体的にいただきました。ありがとうございました。

ここからはタテ型の行政の糸につながってまいりますが、次は金沢市長の山出さん、よろしくお願いいたします。

 

【山出】中央集権型行政システムの象徴が機関委任事務であったわけですが、この機関委任事務を廃止しようということの意義は、私はたいへん大きいと思っています。ただ現実には機関委任事務というのはすでに執行されていたもので、廃止の意味は、法律的な事務の再配分、それに規制緩和であると思います。地方の事務権限の量的な拡大があるわけではありません。

それでは新しい事務権限の移譲はどうだろうかということになりますと、必ずしも多くはないということからすると、率直に申し上げて、行政も住民も分権化が実施されるという実感は薄いのではないでしょうか。私はそんな気がしてなりません。

 

 

 

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