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自然の調和のように、人間社会においても調和を…

 

千賀−さっきね、座長の藤岡さんがふるさとを取り戻すという話題を出されて、それで立松さんが、自分が将来小さな農園を持ちたいというお話もありましてね、それを聞いてこれはおそらく、立松さんだけの希望じゃなくて、かなりたくさんの国民達が、まあ、一方ではペットボトルを捨てつつもですよ、都会の人たちが農山村、あるいは漁村、つまり田舎に対してですね、いろんな意味での思いを、希望を持ってきてるんじゃないかと思うんですね、それ、今、非常に強くなってきてるんじゃないかと思うんですね。

で、じゃあ、農山村、漁村のほうはどうかってことで、さっき、井元さんがスキューバダイビングの話をされたんですけれども、まだまだ農山村、漁村のほうの受け手が、まだまだ、準備ができていない、まあちょっと厳しい言い方ですけれど、そんな気がしてるんです。実は私のよく行く所に群馬県の新治村っていう小さな村がありましてそこに"匠の里"っていうのを、小さな集落でつくったんですね、20戸ぐらいの。集落自体は100戸くらいあるんですけれども20戸ほどの職人さん達に来てもらって、職人さんは、中にいた人もいれば、関東一円から来た人もいるんですけども、そこに都会の人たちが来ていろんな体験をする、さっきも言いましたが、わら細工をしたり、ガラス細工をしたり、石に絵を描いたりですね。それがですね、年間50万人くらい来るわけですよ。で、僕はそれを見てね、こりゃあ、やっぱり都会の人達は、何らかの意味の飢えを感じているんじゃないか、それは自己実現ということでよく言われるんですけども、自分をいろんな形で表現したいんだけども、表現しきれない、あるいは、そういう藁とか石とか、ガラスとかと接触して、何かを表現したいんだけれどもできないという都会の生活に、いろんな意味での無力感というかなあ、残念な気持ちを持っていて、もし、それが農山村、漁村でできるならば、本当にリピーターになってですね、通いたいという人がたくさん増えているんですね。ところが、その中に、大きなセンター施設ができたんですよ。

さっきも、井元さんが要らない物っておしゃってましたけれども、50万人の人が来ますから、結構、お弁当も食べる、お昼も食べるし、おみやげも買うわけですよ。で、お金はそっちに落ちるんですよ、センター施設の方にやっぱり、20戸ほどの職人の家にはですね、まあそうは落ちないんですね。時間的にもそんなにたくさん、ひとりの職人が相手できるわけでもない。しかしアンケートとったら、圧倒的に職人の家があるから来るという。価値という言葉を使うならば、中核価値はまさに職人の家にあるわけです。ところが交換される価値は、つまりお金は、センターの方に落ちる。その価値の受ける都会の人が「これはいいなあ」と思う価値観と、お金が落ちる価値の場とズレがあるんですね、そのズレがある意味でいろんな誤解を生んできたんですね、今までね。だから、行政がお金を落とすときもですね、そんな職人の家に金かけたってですね、どうせ金は落ちないんじゃないかと、やっぱりセンター施設をつくるべきだ。ということでセンター施設どんどん造る。だけど実際に、都会の人たちが来るのは職人の家であったり、そこに野仏を巡る道があったり、あるいは観光農園があったりして、農業や自然や職人の手作業と接触する事を魅力にもってくると。

 

 

 

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